Tottori Breath 現場を知ることの大切さ



Tottori Breath

新型コロナの感染が少し収まり、海外から友人や関係者が日本に続々と訪れるようになってきた。先日はチェコの首都・プラハ在住の友人、そしてその前は、英国・ロンドン。アメリカ・サンフランシスコからも親友が帰国して久しぶりに旧交を温めた。彼らとコロナ禍の間も、リモートやメールで会話は続けていたが、やはり、リアルで会い、食事をしながら、異国の事情や話を聞くのは格別。ぼく自身、この3年余り海外に渡航していないから、余計に生の情報は新鮮に感じる。

ロシアのウクライナ侵攻影響やエネルギー事情、新型コロナへの対応や市井の人々の暮らしぶり。ぼくの質問は尽きない。コロナ感染によって海外ではどんな混乱が有り、どう克服し、現在はどうなっているのか。自然とぼくの持っている情報や見方の裏付けを取りながら、時代の波や潮目を見るのに貪欲になってしまう。「なんだか取材されているみたいだよ」と友人が笑う。長年テレビの取材をしてきたぼくの悪い癖がまた出てしまった。

テレビや新聞が伝えている情報は、総論的な情報や記者が取材した、あるひとつの側面を切り取った断片に過ぎない。ニュース枠や紙面の制約、視聴者や読者が受け取るニュースのバリューもある。また、記者の恣意的な見方にフォーカスされてしまった情報も少なくない。その国の政治と庶民の日々の暮らし。本当は、自分がそこに行き、土地の上に立たないと正しくは分からないとぼくは感じている。

とりだい病院の医師や看護師、関係者が毎回出演し好評を博す「カニジルラジオ」(山陰放送ラジオ 毎週土曜昼0時25分放送)では、「カニジル10号発刊・カニジルラジオ100回放送記念祝賀会 特別公開録音」として10月15日にスペシャル放送が行われた。

メインパーソナリティー・田崎健太カニジル編集長の軽妙洒脱なリードに誘われて原田省病院長や武中篤副病院長、木野村尚子アナウンサーが、「広報誌 カニジル」と「カニジルラジオ」の誕生秘話を披露。地域医療やとりだい病院の役割、そして未来の病院の姿を熱く語っている。

聞き逃した方は、とりだい病院公式Web「カニジルラジオ」(https://www2.hosp.med.tottori-u.ac.jp/kanijiru/radio/)、あるいは、YouTube「BSS山陰放送ラッテチャンネル」でお聞きいただければ幸いだ。(バックナンバーも掲載。声に加えて収録時の出演者の表情がわかる動画つきで見られますよ)

この中でやはり中心になったのは、とりだい病院の手術支援ロボットの充実ぶりである。米国製の画期的な手術支援ロボット「ダビンチ」がとりだい病院に導入されたのは2010年。18年には2台目が稼働。年間8000件の手術のうち約300件でロボット手術が行われてきた。そして、22年2月には、国産初の「hinotori(ヒノトリ)」が、中国地方の病院で初めて導入された。全国の病院でも8例目。従来の手術支援ロボットより可動域が広く汎用性も高い。

ロボット手術を米国で学び、とりだい病院で低侵襲外科センター長としてロボット手術をリードしてきた、泌尿器科医の武中副病院長は「神の手よりもロボットは正確。誰でも熟練をし、チームでいいサポートをすれば高品質で安全性の高い手術を行える」と語る。

スマートホスピタルを目指し、変化するとりだい病院。診療科や職種の枠を越え、連携するチーム医療を拡充してきた。これもロボット手術の発展には欠かせない。

原田病院長、そして我々「カニジル」は、病院は「社会的共通資本」であると言い続けてきた。ご存じのようにこれは米子出身の世界的経済学者、宇沢弘文氏の言葉で、「豊かな社会は、各人が相応しい職業につき、幸福で、安定的な家庭を営み、安らかで、文化的水準の高い一生をおくることができる社会」を意味する。

その実現条件として宇沢氏は、「豊かな自然環境の持続的維持」「文化的環境の創出」「子どもの能力を開花できる教育」、最後に「疾病、傷害に対する最高水準の医療を享受できる施設の存在」をあげている。

医療も病院も現場が大切。市民の声に耳を傾け、病院の外に出て話を聞く。そこに真実がある。同様にカニジル読者の皆さんには「病院を知ること」の大切さを忘れないで欲しい。新しい技術を導入し、動かす医師や看護師、スタッフ。彼らもチャレンジし、夢を持ち、命を守るという使命を胸に日々奮闘しているから。



結城豊弘
1962年鳥取県境港市生まれ。テレビプロデューサー。とりだい病院特別顧問と本誌スーパーバイザーを務める。鳥取県アドバイザリースタッフ。境港観光協会会長。