そもそも大学なの? 病院なの? というネーミングへのツッコミはさておき、大学病院というのは謎に包まれた存在だ。「閉鎖的で近寄りがたい」「お堅い組織」くらいならまだしも、下手すれば「紹介状が無い人からは容赦なくお金を徴収する」「薬の実験台にされる」「白い巨塔」など、冷血でドロドロとしたイメージを持っている人もいるかもしれない。ここでは、そんな大学病院にまつわる謎を解き明かし、漠然とした不安や心配を取り除いていきたい。
まず、大学病院というのは、診療がメインのいわゆる町の診療所や病院とは違い、診療以外に医師や看護師、その他医療職者を育てるための教育機関であり、新しい医療技術の研究や開発を行う研究機関であるというのが前提である。
また、多くの大学病院は、高度で専門的な医療を研究し、提供する能力を持つ「特定機能病院」に国から指定されている。つまり、風邪や腹痛といった初期症状よりも、高度で専門的な医療を必要とする患者さんを診る病院と区別されているのだ。
これは決して大学病院がお高くとまっているわけではない。
最新設備や高度で専門的なスキルを求めて患者さんが集中してしまうと、本当に大学病院で治療を必要とする重症患者が埋もれる、あるいは、いつまで経っても診てもらえない軽症患者がでてくる可能性がある。そのため適切に患者さんが病院にかかれるよう、医療機関を機能別に分けているのだ。
そこで登場するのが「紹介状」というシステムである。
紹介状とは正式名称「診療情報提供書」。医師が他機関の医師に患者を紹介する際に、患者の基本情報や症状、治療・投薬状況などを記載する書類を指す。紹介状があれば、引き継いだ医師は患者の容体を一から調べ直すことなく、紹介状の情報を基に迅速に治療方針を決めることができる。病院の機能を分けて、それぞれが診るべき患者の治療により早く取りかかれることは、時間的・経済的にも患者側のメリットになる。
もっとも紹介状がない場合でも、大学病院によっては診察を受けられる。ただ、「選定療養費」といって初診・再診時にかかる費用が診察料と別に発生するので注意していただきたい。
これも大学病院価格かと思われるかもしれないが、正確には厚生労働省が定めた金額である。ちなみに現在は、選定療養費として大病院=特定機能病院・一般病床500床以上の地域医療支援病院で5000円以上(歯科の場合は3000円以上)を診察料プラスαで必ず支払うことになっている。
とはいえ、まずは足を運びやすい身近なかかりつけ医を見つけることが望ましい。その上で自分の希望病院がある場合は「○○病院に紹介してほしい」と相談していただきたい。遠慮は禁物である。医師にとって大切なのは患者さんが治癒することなのだ。大学病院とかかりつけ医は相互補完する関係である。患者さんは病院にかかる際、その性格を分かった上で、両者をうまく利用して欲しい。