小児医療は、一つの分野(臓器)にとらわれることなく胎児から成人までの成長と発達を総合的な見地から診療していくという特徴から、成育医療と呼ばれております。
当科は地域医療の基幹病院としての役割を担っており、各分野を専門とする医師が互いに議論し、総合的な見地から診断、治療方針の決定を行っております。
同時に各専門グループがそれぞれの研究テーマを持ち研究活動を行っております。
● 小児総合病棟として内科系外科系の各診療科の小児患者を総合的に管理し、各専門分野の専門科により小児疾患すべてをカバーする。
● 病棟・新生児医療センターでは血液ガス・凝固系・免疫検査などの検査が可能であり、救急疾患に対し24時間体制で治療を行っている。
● 内分泌・代謝疾患について、内分泌疾患全般の診療に対応しています。多様な原因に基づく低身長児への成長ホルモン補充療法、肥満に対する研究と患者指導、骨系統疾患の診断・治療、新生児マススクリーニング検査で指摘される疾患(先天性甲状腺機能低下症、脂質代謝異常症等)の診療も行っている。
● 末梢血幹細胞移植を含めた白血病・固形腫瘍に対する治療。再生医療。
● 心臓カテーテルによる心疾患の診断と治療。
● 脂肪肝・胆汁うっ滞性疾患、肝炎ウイルス母子感染予防、重症便秘症、慢性反復性腹痛など小児消化器疾患全般。
● 食物アレルギーを中心に小児アレルギー疾患全般。
● 腎生検による慢性腎疾患の診断・治療方針の決定。
● 総合周産期母子医療センター(新生児部門)は地域で唯一の高度の新生児集中治療室として稼働率が高く、重症新生児・超低出生体重児の管理に当っている。
● 内分泌負荷試験、遺伝子検査、ホルモン治療
● 骨髄検査、造血細胞移植
● 心エコー、心臓カテーテル検査、心臓インターベンション
● 肝生検、ウイルス肝炎に対する抗ウイルス療法
● 段階的な経口食物負荷試験による食物アレルギーの診断、部分解除の推進
● 腎生検、慢性腎疾患の治療
● 血液成分分離装置
● 重症新生児の呼吸循環管理、NO吸入療法、低体温療法
● 新生児医療センターには高頻度人工換気装置、胸部・腹部用超音波診断装置、新生児用気管支ファイバーなど、高度な新生児医療を行うために必要な機器を備えている。
【初めて鳥取大学医学部附属病院小児科外来を受診される方へ】
初めて当科へ受診される方へのお願いについてのご案内です。
(印刷される場合などに、同じ内容のPDFファイルもございます)
外来は、「 一般外来 」 と 「 特殊外来 」 に分かれます。
診察は予約制となっております。
● あらかじめ、どの特殊外来への受診かお分かりであれば、その曜日への受診予約を電話もしくはFAXでお願いします。
● どの外来への受診かお困りの場合は、直接外来までご連絡いただけましたら、ご案内させていただきます。 ● 小児科外来では、声掛けによるアナウンスで患者さんをお呼びしています。お呼び出しのご案内が聞き取りにくい方は、外来にお越しいただいた際に、窓口スタッフにその旨をお伝えください。
【一般外来】
● 初診 月火水木金
● 再診 月火水木金
【特殊外来】
循環器 |
月曜日、金曜日* |
乳児健診 |
月曜日 |
リウマチ |
火曜日(第1・3週) |
生活習慣・内分泌・代謝 |
火曜日 |
内分泌・代謝外来 / 血液・腫瘍 |
水曜日 |
フォローアップ/消化器・アレルギー |
木曜日 |
腎臓 |
金曜日 |
食物負荷試験 |
木曜日に日帰り入院で実施 |
* 金曜日の循環器外来は、原則として紹介の新生児が対象です。
月、火、水、木、金曜日の午前中。
各専門外来によって曜日が決まっております。
当院は、重症あるいは専門診療を必要とする患者さんを優先して診療することが求められている医療機関です。
当院受診を希望されます際には、かかりつけの医療機関からの診療情報をお持ちになって受診されることをお勧めいたします。
診療情報をお持ちにならない状態で受診されますと、新たに情報収集のための時間や検査が必要となります。
また、他の緊急を要する患者様の診療に支障を来す可能性がありますので、追加初診料が必要となりますことをご了解ください。
なお、予約患者、緊急を要する方を優先しますので、相当の待ち時間が生じることもご了解ください。
当院への受診を患者様に勧める場合、医療福祉支援センターのFAX予約サービスのご利用をお願い申し上げます。
緊急を要する場合や予約サービスを利用できない場合には、直接外来までお電話でご一報ください。
【肝臓】
■ 脂肪肝の治療
成人のみならず、最近では小児でもメタボリックシンドロームに伴う脂肪肝が増加しています。一部は肝硬変、肝細胞癌に進行することも知られてきており、積極的に診断し、食事・運動療法を行っています。
■ 肝生検
肝臓の病気の診断、管理のために重要な検査法です。針で肝臓の一部を採取し、顕微鏡で組織の状態を確認します。成人では一般的に行われている検査法ですが、小児の実施施設はまだ限られています。
■ 慢性消化器疾患の診断・治療
重症便秘症や機能性消化管障害は慢性・反復性の腹痛や排便障害を生じ、生活の質の低下や登校困難をきたすことがあり、適切な診断・治療が望まれます。また近年増加傾向である炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病など)に対して、消化器内科と連携しながら診断・治療に当たっています。
■ 食物負荷試験
近年、食物アレルギーを持つ小児が増加しています。近隣の医療機関と連携して診断・治療にあたっています。血液検査だけでは診断に不十分なことが知られており、段階的に経口食物負荷試験を行うことで安全に摂取できる食物の量を調べて、部分解除を進めることで少しずつ摂取できる量が増えてくることが期待されます。当科では2022年度にのべ95例、2023年度にはのべ104例実施しています。
■ 希少疾患の診療
胆汁うっ滞性疾患:アラジール症候群、進行性家族性肝内胆汁うっ滞症、代謝性肝疾患(シトリン欠損症など)、ミトコンドリア病など
炎症性腸疾患:潰瘍性大腸炎、クローン病など
【心臓】2023年
■小児循環器疾患入院症例数 60例
■心臓超音波検査 2,714例
■ホルター心電図 49例
■運動負荷心電図 8例
■心臓カテーテル検査 20例(うちインターベンション 4例)
【新生児】
2023年診療実績
■ 総入院数 293例
■ 出生体重別
超低出生体重児(出生体重1000g未満) 16例
極低出生体重児(出生体重1000g以上1500未満) 5例
低出生体重児(出生体重2500g未満) 86例
■ 出生場所別
院内出生 249例
院外出生 44例
鳥取県 44例(米子 39例、倉吉 5例、鳥取 0例)
島根県 0例
■ 外科治療
気管切開 1例、胃瘻造設 2例、食道閉鎖 1例、消化管穿孔 2例、鎖肛 1例、右先天性横隔膜ヘルニア 1例、臍帯内ヘルニア 1例
リザーバー留置・VPシャント 1例
未熟児網膜症 レーザー治療 5例
抗VEGF抗体注射 3例
<周産期・新生児指導医・専門医>
周産期・新生児指導医 3名
周産期・新生児専門医 5名
<実施している治験>
RSウイルス感染予防に関する健康な乳児を対象とした臨床試験
<新生児蘇生法講習会>
Aコース、Bコース随時開催 → こちら
【腎臓】
主に、腎炎、ネフローゼ症候群、先天性腎尿路異常、慢性腎不全管理(腹膜透析を含む)など腎疾患の管理を行っております。病理診断が必要な腎疾患に関しては腎生検を行い、診断と治療方針決定を行っています。当科での腎生検は近年では年間15-20件程度あり、通算1000件を超える実績があります。腎移植については移植施設と連携して管理しています。先天性腎尿路異常は、検査(排尿時膀胱造影、腎シンチグラフィなど)を行い、小児外科と連携して管理しています。膠原病・リウマチ性疾患の診断・治療、症例に応じて生物学的製剤の導入なども行っています。
近年、遺伝学的検査の進歩により、腎臓領域でも遺伝子検査で診断可能な疾患が増えています。当院の遺伝子診療科と連帯して遺伝子カウンセリングを行っています。
【対象疾患】
● 血尿・蛋白尿:学校検尿、3歳児検尿異常の精密検査
● ネフローゼ症候群
● 慢性腎炎:IgA腎症、膜性増殖性糸球体腎炎、紫斑病性腎炎、アルポート症候群など
● 急性腎炎
● 腎不全:急性腎不全、慢性腎不全
● 膠原病:SLEおよびループス腎炎、若年性特発性関節炎、皮膚筋炎など
● 尿路感染症
● 先天性腎尿路異常:膀胱尿管逆流症、水腎症、嚢胞腎、低形成腎など
● 夜尿症、排尿障害
2023年度実績
■腎生検件数13件
≪疾患内訳≫
ネフローゼ症候群 6例(微小変化型 6例)
IgA腎症 2例
ループス腎炎 3例
慢性腎不全 1例
■生物学的製剤使用実績
≪疾患内訳≫
全身型若年性特発性関節炎 3例
関節型若年性特発性関節炎 9例
ぶどう膜炎 1例
ANCA関連腎炎 1例
ネフローゼ症候群 5例
【血液・腫瘍】
血液・腫瘍グループでは、(1)血液悪性疾患(白血病や悪性リンパ腫など)、(2)血液非悪性疾患(再生不良性貧血や好中球減少症、血友病など)、(3)原発性(先天性)免疫不全症候群、(4)固形腫瘍(神経芽腫や肝芽腫といった小児がんや脳腫瘍の化学療法)の診療を担当しています。日本小児血液・がん学会の認定専門医が2名在籍しております(奥野、掛江)。
悪性腫瘍は小児外科、脳神経外科、整形外科、放射線治療科など他科と協力して、治療しています。また、白血病などに対する造血幹細胞移植(臍帯血移植、骨髄移植、末梢血幹細胞移植)も可能です。多くの疾患が特定臨床研究の参加対象となっており、日本全国共通のルールに従って治療をしています。
最近症例数が増えてきているのは、乳児血管腫に対するβ遮断薬(プロプラノロール)内服による治療です。乳児血管腫は自然に改善することが期待されますが、プロプラノロール内服により早期に改善させることが可能です。形成外科や皮膚科と共同で診療しています。
遺伝性疾患(親から子へと受け継がれていく病気)については、保険診療で遺伝子検査が可能な疾患の種類が増え、確定診断に至るケースも増えています。遺伝子検査を行う際は専門家(認定遺伝カウンセラーR、臨床遺伝専門医)によるカウンセリングを行って患者さんやご家族のケアに努めています。当グループでは、奥野が臨床遺伝専門医の資格を有しており、遺伝子診療科と連携して遺伝カウンセリングを行っています。
(1)血液悪性疾患 | 11例 |
---|---|
(2)血液非悪性疾患 | 8例 |
(3)原発性免疫不全 | 6例 |
(4)固形腫瘍(血管腫・血管奇形を含む) | 3例 |
(1)血液悪性疾患 | 7例 |
---|---|
(2)血液非悪性疾患 | 8例 |
(3)原発性免疫不全 | 0例 |
(4)固形腫瘍(血管腫・血管奇形を含む) | 5例 |
西暦 | バンクCBT | 血縁者BMT | バンクBMT | auto-PBSCT | auto-BMT | 合計 |
---|---|---|---|---|---|---|
2023 | 1 | 0 | 2 | 1 | 0 | 4 |
2022 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
2021 | 1 | 0 | 0 | 1 | 0 | 2 |
2020 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 1 |
2019 | 1 | 0 | 1 | 1 | 0 | 3 |
2018 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
2017 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
2016 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 |
2015 | 1 | 0 | 1 | 0 | 0 | 2 |
2014 | 1 | 0 | 1 | 0 | 0 | 2 |
2013 | 2 | 1 | 0 | 0 | 0 | 3 |
合計 | 8 | 2 | 3 | 2 | 0 | 15 |
バンクCBT:臍帯血バンクからの臍帯血移植、血縁者BMT:血縁者間骨髄移植、バンクBMT:骨髄バンクからの骨髄移植、auto-PBSCT:自家末梢血幹細胞移植、auto-BMT:自家骨髄移植
【内分泌】
2023年診療実績
【検査実績】
●下垂体前葉ホルモン分泌刺激試験 50件(入院44件、外来6件)
●水制限試験 1件
●経口ブドウ糖負荷試験 11件(外来)
【診療実績】
●インスリンポンプ(SAP含む) 4件
●持続グルコースモニタリング(CGM) 8件
●骨形成不全症等に対するビスホスホネート製剤投与 11件
【診療実績(2019年~2023年)】
脳下垂体疾患と成長障害 | 599例 |
甲状腺疾患 | 154例 |
副甲状腺疾患およびカルシウム代謝異常症 | 30例 |
副腎疾患 | 21例 |
性腺疾患(性腺機能性異常症、原発性・続発性を含む) | 185例 |
糖尿病 | 45例 |
脂質異常症 | 29例 |
肥満症 | 113例 |
骨系統疾患 | 36例 |
合計 | 1,202例 |