良性脳腫瘍
髄膜腫の手術では術前に脳血管内手術により栄養血管を塞栓することで、手術中の出血量を最小限にするように心がけています。また、髄膜腫周囲のくも膜をできるだけ温存し、腫瘍の全摘出および、周囲脳への侵襲を最小限に抑えるように最大限の注意を払っています。術後は早期離床・早期退院を心がけております。
悪性脳腫瘍
主に神経膠腫、髄芽腫、胚細胞性腫瘍、悪性リンパ腫に対し、的確に診断し、エビデンスに基づいた一貫した治療方針を打ちたて、治療を行っています。
*手術における複数のモダリティーを使用した腫瘍の摘出
手術による腫瘍摘出においては脳機能の温存を重視して行っています。ニューロナビゲーションシステムやフェンス・ポスト法を利用して後遺症を残さずに最大限の腫瘍摘出を心がけています。さらに、運動野の同定には拡散テンソルイメージングによる運動神経の走行確認や体性感覚誘発電位、運動誘発電位などモニタリングしながらの手術や、言語野近傍の腫瘍に対してはfunctional MRIや覚醒下手術をルーチン化しています。手術摘出標本は迅速診断を病院病理部と提携し行い、迅速なる病理診断を実際の手術摘出方針の参考にしています。
(ニューロナビゲーション とフェンス・ポスト法による手術プラン)
*神経膠腫における遺伝子解析
以前より神経膠腫の発生には様々な遺伝子異常が関与していることが知られていました。最近では化学療法や放射線療法の治療効果に関与する遺伝子異常も報告されています。神経膠腫の術後の化学療法や放射線療法の選択には、手術で摘出した腫瘍組織より遺伝子を抽出し、遺伝子解析結果より患者さん各々に最良の治療法を選択するテーラーメード治療を行っています。特に悪性神経膠腫の標準的治療で使用する抗癌剤であるテモダールの治療効果に関与するMGMT遺伝子の異常に関しては、MSP法と免疫組織学的染色で評価を行っています。その他、神経膠腫で多く報告されている腫瘍の進行や予後に関与するがん遺伝子やがん抑制遺伝子の異常も解析しています。
(MSP法によるMGMT遺伝子異常の解析)
下垂体腺腫をはじめとするトルコ鞍部病変に対して経蝶形骨洞手術を全例、経鼻孔で行っています。それにより、従来の口唇下粘膜を切開する方法と比べて、口周囲の腫れや痺れなどの術後合併症がなく、患者さんの負担が軽減しているようです。また,神経内視鏡を併用(内視鏡下経鼻孔的下垂体手術)し、顕微鏡手術の死角を観察することで手術成績の向上をはかっています。
脳血管内手術はあたまをあけることなく、従って脳を直接さわることなく頭蓋内の病変を治療する低侵襲な先端医療です。
動脈瘤の治療では脳を直接さわることなく動脈瘤の治療を行い、術後に頭部に手術創が残らず、また頚動脈狭窄の患者様では手術時間は約1時間で、入院期間は最短5日となっております。
当診療科での脳血管内手術は術者として800例以上(術者、指導、助手を合わせて2000例以上)の治療経験持つ日本脳神経血管内治療学会指導医が担当いたします。
また、当施設の関連病院の脳血管内手術もそれぞれの病院の担当医と十分にコンサルトを行った上、直達手術と血管内手術のどちらが最適かを個々の患者様で判断した上で協力して治療に当たります。
脳血管内手術の対象疾患は、未破裂脳動脈瘤、破裂脳動脈瘤、頚動脈狭窄症、頭蓋内血管狭窄症、脳動静脈奇形、硬膜動静脈瘻、脳腫瘍の術前塞栓術など多岐にわたります。近年脳血管内手術の治療成績向上、低侵襲治療化、血管内手術の認知度の向上により飛躍的に症例数が増加しつつあります。
当院での脳動脈瘤の治療は7割が脳血管内手術でおこなっており,良好な治療成績を得ています.
治療方法、手術適応などのセカンドオピニオンも受け付けております。毎週火曜日および第1,第3木曜日に脳血管内治療外来を行っております。お気軽にご相談ください。
●当院ではいち早くステントを併用した脳動脈瘤の塞栓術を施行しています.いままで治療困難であった脳動脈瘤に対してもステントを併用することで治療可能となってきています.
●頚動脈ステント留置術(250例以上の頚動脈ステント留置術の経験があります)
●急性期血行再建術
急性期脳梗塞に対するカテーテルを用いた血行再建術も神経内科との協力により,おこなっております。
症候性てんかんに対するモニタリングを併用した焦点切除術,三叉神経痛・顔面けいれんに対する微少血管減圧術,またバクロフェン髄注による痙縮の治療もおこなっております。
脊髄専門医とともに顕微鏡を用いた手術を年間5-10例程度おこなっております。
術前CT、MRIなどの画像診断をもとにニューロナビゲーションを用いた脳腫瘍摘出術
内視鏡支援下垂体腫瘍摘出術
最新鋭フラットパネル血管撮影装置を用いた脳血管内手術(バイプレーンフラットパネル血管撮影装置2台)
脊髄脊椎手術
機能的脳神経外科手術