喘息は空気の通り道となる気管支が狭くなることで、喘鳴(ゼーゼー、ヒューヒューという音)がして、咳や呼吸困難を繰り返す病気です。
喘息の原因は気管支の慢性的な炎症です。そのため気管支が過敏な状態になっていて、そこに刺激が加わることで気管支の筋肉が縮み、咳や息苦しさを伴う喘息発作(気管支が狭くなる状態)を起こします。
喘息発作は、風邪などの感染症や花粉・ダニなどのアレルゲン、気候変化、タバコの煙、その他に激しい運動などが原因で起こります。
2017年に厚生労働省が行った患者調査では、病院や診療所に通院して継続治療をしている喘息患者さんは、約117万人と報告されています。
ただ喘息は常に症状があるわけではなく、症状が軽くて継続して通院されていない方もおられ、そのような患者さんも含めると約450万人以上(人口の4%前後)とされています。
つまり、喘息は身近な病気であり誰が発症してもおかしくありません。
気管支喘息の方の中には、普段は喘息の症状がなく運動時だけ喘息症状が出る、運動誘発性気管支攣縮/運動誘発性喘息という状態もあります。
アスリートの場合、強度の高い運動により過換気状態になることで肺に強い負担がかかり、よりこの運動誘発性気管支攣縮を起こしやすいとされ、一般人とアスリートを比較した場合、アスリートの方が喘息の頻度が高いと言われています。オリンピックに参加した日本代表選手の中で8~12%の選手が喘息を持っていたという報告もあります。
喘息の診断には、詳しい症状の経過を伺うことと診察の他に、血液検査やレントゲン検査、呼吸機能検査、呼気一酸化窒素検査などの検査結果を組み合わせて行います。
喘息の治療は、普段から使用して気管支の炎症を抑えて発作を予防することが中心となります。治療薬としては吸入ステロイドという薬剤を用い、これは運動誘発性気管支攣縮の方でも同様です。
アスリートの喘息では、練習・競技などの活動時に特に症状が出やすいため、事前に吸入剤を使用するなどの薬物療法の他、非薬物療法も含めて対策をとることで、症状を抑えることができます。
薬物療法
非薬物療法
なお、喘息の治療薬の多くは除外措置(TUE)申請なく使用できますが、一部ドーピング禁止薬に当たる薬もあります。そのため、気管支拡張薬の一部や喘息発作の時に使用するステロイド全身投与は大会前に使用する場合はTUE申請が必要となりますので、担当医や薬剤師にご相談ください。
練習や競技の際、また日常生活でも夜間や早朝、季節の変わり目に喘鳴(ゼーゼー、ヒューヒュー)が聞こえる、咳が止まらない、息切れや胸の圧迫感を自覚することはありませんか?
もしこれらの症状が続く時は喘息かもしれません。
喘息は適切に治療を行うことで発作を起こしにくくでき、そうすることで生活の質や競技パフォーマンスの向上も期待できます。喘息かもしれないと思ったり、喘息のある方で症状がうまくコントロールできない場合は、受診・相談をしてみてください。