公開資料

ポジティブな行動支援 PBS とは?

ポジティブな行動支援(PBS)とは

ポジティブな行動支援 PBS とは、ポジティブな行動を、ポジティブに支援するための枠組みです。

   ・ポジティブな行動・・・その人のより良い生活や、本人にとって価値が感じられる成果につながる行動

   ・ポジティブに支援する・・・罰的な方法ではなく、肯定的教育的予防的な方法で支援すること

また、周囲の人々や、環境、状況も対象としており、持続的な成果を生み出すための仕組みづくりを目指します。

 

ポジティブな行動支援では、行動の理由を明らかにし、その理由に基づいた支援計画を立てます。

その際に用いられるアセスメントや、技法には、応用行動分析学(Applied Behavior Analysis:ABA)に基づくものです。

 

応用行動分析学 ABAの考え方による、望ましい行動の増やし方

ポジティブ行動支援 図①

 

望ましい行動を増やすことは、困っている問題行動を減らすことになります。

    良い行動、困った行動

 

どんなところで生かされているの?

ポジティブな行動支援は、学校教育、障害福祉、家族支援など、さまざまなところで生かされています。

学校での実践については、下記のホームページでも紹介されています。

 

ポジティブな行動支援は、現在困っている人だけでなく、全ての人を対象としており、

「問題の解決」だけでなく、「問題の予防」に取り組むことができます。

 

実際にはどうやって取り組むの?

学校での取組みを例に、ポジティブな行動支援の取り組み方の例を紹介します。

 

ポジティブな行動支援では、対象を、第1~3層までに分けて支援を行います。

 三層構造三層構造2

 

第1層 グリーンレベルの支援 例

1. すべての子どもたちにスクリーニング・・・ SDQ(※)などのチェックリストが利用されています。

    ※SDQ・・・ Strength and Difficulties Questionnaire:子どもの強さと困難さアンケート

       下記のHPからダウンロードができます。

 

2. 行動目標を決める・・・子ども、教職員、保護者のみんなで合意できるものを3~5つ決め、それぞれに、具体的な行動を示します。

(例えば、『協力』『責任』『思いやり』など)

3. 具体的な行動を示す・・・ 行動目標の柱について説明をします。

 (例えば、『協力』・・・「挙手をして発言をする」「外遊びで順番を守る」 など)

4. 行動のフィードバック・・・ 誰かが目標を守れているのを見かけたら、互いにそれを伝えます。(例えば、チケットを渡していく。)

5. フィードバックの集計・・・ (例えば、渡されたチケットが、一番多かった子はご褒美をもらえる、一番多かったクラスはパーティを開く、学校全体で目標を達成できたら、映写会など特別な行事をするところもあります。)

 

全校で「達成しよう!」というムードが高まり、望ましい行動を意識するようになります。

そして、それが子どもたちの中に内在化していくことを目指します。

 

 

第2層 イエローレベルの支援 例

第1層、グリーンレベルの支援ではうまくいかなかった、リスクが高いと思われる子どもへの支援例です。

・小グループでのトレーニング・・・ 不適切な行動になりやすい領域(向社会的、問題解決、学習態度など)に対し、同じように弱さを持った子どもたちが集まり、ともに指導を受けます。

・チェックイン・チェックアウト・・・ 一定の時間枠(1時間ごと、30分ごとなど)を設け、グリーンレベルで掲げた行動目標について、教職員から個別にチェックしてもらいます。

・メンターをつける・・・ より密な関わりが必要な児童生徒には、校内の管理職、教職員、大人のボランティアなどがメンターになることもあります。「個別に自分のことを気にかけてくれる大人」との関係を築き、ほめられる体験を重ねます。

 

 

第3層 レッドレベルの支援 例

これまでの介入でうまく反応が出ない、より専門的な対応を必要とする子どもへの支援例です。

・多角的な機能的行動アセスメント FBA・・・ 行動観察や、保護者を含む関係者からの綿密な聞き取りなどを行います。

・本人の安全性を確保する・・・ 問題行動がエスカレートした場合(暴れるなど)、感覚統合室でクールダウンするなどの方法を考えます。

・個別教育計画(IEP)・・・ 精神疾患を持っている子どもや、「情緒障がい」に該当する子どもなどに作成します。

・福祉的な機関等との連携・・・ 子どもの環境との連携を深め、長期的な目標に沿ったアプローチをつくるためには欠かせません。

 

データに基づいて取り組むこと

 ポジティブな行動支援を行う上では、データに基づいて取り組むことが重要とされています。

グリーンレベルの例であげた、チケットの集計もその一例ですが、そのようにして得られたデータを、グラフとして表示しているところもあります。

効果を明らかにすることもできますし、「続けていこう!」という気持ちもより生まれます。 

書籍、ホームページの紹介

本文は下記のホームページ、書籍を参考に作成しました。

APBS ホームページ 

・栗原慎二 編著『ポジティブな行動が増え、問題行動が激減!PBIS実践マニュアル&実践集』 

  2018.1 ほんの森出版株式会社

 

また、ポジティブな行動支援を行う上では、「データの活用」や、「応用行動分析学による解釈」が重要です。

下記の書籍で理解を深めていただくことで、支援がより効果的になると思われます。

 

書籍

・ディアンヌA.クローン/ロバートH.ホーナー 著『スクールワイドPBS』

  野呂文行/大久保賢一/佐藤美幸/三田地真実 訳 2013.11 (有)二瓶社

・大久保賢一 著『3ステップで問題行動を解決するハンドブック 小・中学校で役立つ応用行動分析学』 

  2019.5 株式会社学研教育みらい