当科は、平成15年4月1日以来、日本形成外科学会より形成外科認定施設として認定されています。豊富な治療実績を有し、専門的な形成外科学を教育し、形成外科専門医を育成できる施設です。
2023年に行った手術件数は774件であり、年余にわたり年間350名以上の方に手術を実施しております。
図1
手術分野は褥瘡・難治性潰瘍、腫瘍の切除と再建を筆頭に、熱傷、ケロイド、肥厚性瘢痕、外傷から先天異常に至るまで多岐に渡っており、各種形成外科の分野を広く網羅しています。(図2)。
また、他科との合同手術が2割以上を占め、外科系のみならず、内科系の各科とも連携をとって手術をしています。
形成外科手術の中でも、もっとも難易度が高い手術とされるのが、マイクロサージャリーによる遊離皮弁移植術です。2023年には29例の遊離皮弁移植術を行い、100%の成功率を修めています。その内訳は、中咽頭、舌、下咽頭、上顎などの頭頸部再建、乳房再建などを主体としています。世界トップクラスの手術成績は98%前後と言われていますが、当科の成功率は非常に高い成功率といえます。
また、近年糖尿病や動脈硬化などの生活習慣病が増加するに従い、糖尿病性足病変、下肢血行障害および静脈性潰瘍といった患者が増加しています。また、高齢化に伴い褥瘡やその他難治性潰瘍が問題となっています。これらに対する治療は、形成外科が大きな役割を担っています。当科でもこれらの手術件数が最も多いものとなっており、そして年々増加しています。外科治療のみならず、原疾患の治療や保存的治療を含め、放射線科、心臓血管外科、皮膚科、整形外科、循環器内科、内分泌内科、腎臓内科といった複数の科と協力して行っています。また、住宅・施設での創部管理について、退院時や外来で家族や介護者に指導を行い、他院との連携をとりながら治療に取り組んでいます。
褥瘡は、院内で褥瘡対策委員会を設置し、医師、看護師、理学療法士、作業療法士、栄養士、薬剤師など他職種で協力して院内の褥瘡患者、褥瘡ハイリスク患者の対策を行っています。院内の褥瘡発生率は年間0.3%であり、全国平均0.5%より低い発生率を維持しています。また、当科は日本褥瘡学会在宅褥瘡医療ネットワーク委員会鳥取県代表であり、地域の褥瘡予防対策・治療の普及と啓蒙に努めています。
再生医療の分野では、平成23年10月に厚生労働省の定める「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針」の承認を受け、全国初の「自己皮下組織由来細胞移植による乳房再建術」の臨床研究を5名の方に実施し、終了することができました。今回の臨床研究の結果を基にし、この方法は乳房再建法の選択肢のひとつとして発展しています。また、下肢血行障害による虚血に対する血管新生の研究も行っております。
形成外科は、創を治すだけではなく、創をより良くする、ひいては「より良く生きる」ことをめざしています。形成外科の役割は、従来から行っている頭頸部再建、乳房再建、急性期の重症顔面外傷、熱傷、フットケアを含む下肢血行障害、褥瘡、難治性潰瘍血管異常、再生医療、難治なケロイドなどの治療はもちろんのこと、常に新しい分野へ挑戦をしていきます。より広く形成外科を知って活用していただけるよう努めていきます。
図2