癌の手術においては、根治性とともに、手術後の生活の質を損なわない手術方法を選択しています。

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癌の手術においては、根治性とともに、手術後の生活の質を損なわない手術方法を選択しています。

1.食道癌治療

食道癌は再発しやすく悪性度が高い癌ですが、われわれは、様々な治療を駆使して少しでも生存率を高める努力をしています。

1)手術治療

基本的には開腹、開胸、頚部操作により食道摘出とリンパ節郭清を行います。侵襲の大きな手術の一つですが、われわれは、開胸操作に内視鏡を用い、出来るだけ胸の傷を小さくして、術後の疼痛緩和を計っています。また、手術前に化学療法を行い、それから手術を行うことで、再発を極力抑えた手術法を取り入れています。それにより、手術後の患者様の予後の向上を目指しています。

2)化学放射線療法(CRT)

高齢者や心肺合併症を有する患者様には放射線治療+制癌剤治療(タキソテールを現在使用している)を行い、手術治療に匹敵する良好な成績を得ています。比較的侵襲が少なく、かつ癌が消失、縮小する比率(奏功率)が高いのが特徴で、入院中の食道癌患者の1/2は化学放射線療法(CRT)で治療されています。

放射線化学療法の治療成績 (平成6年1月~平成18年5月)
全体 奏功率 : 67.9% (完全に癌が消失+部分的に癌が消失した例)

全体完全に癌が消失部分的に癌が消失変化なし癌が進行
53191798
2.胃癌治療
1)機能温存手術

幽門機能を温存した幽門輪温存胃切除やパウチを作製した噴門側胃切除を採用し、根治性と術後の生活の質を損なわない手術治療を選択しています。さらに、胃を全摘された人は、逆流性食道炎や食後の低血糖などの不快なダンピング症状に悩まされることが多く、このような不快な症状の解消を目的とし、我々は、新しい胃を小腸で作るパウチ-ダブルトラクト法再建を開発しました。この方法により胃全摘術後の患者様の良好な生活の質を確保しています。

胃癌治療

2)低侵襲手術

早期胃癌には低侵襲手術(腹腔鏡下胃切除術)を取り入れ、術後の疼痛緩和や早期退院に努めています。2008年には30例近い早期胃癌に対し、腹腔鏡を用いた低侵襲手術を行いました。合併症0の手術を心がけ、安心の医療を提供しています。

3)術前化学療法(NAC)

高度リンパ節転移を有する進行胃癌に対し、手術前に化学療法を行い、転移を縮小させ、それから手術を行う、術前化学療法(NAC)を取り入れています。NAC治療によって胃癌手術の根治性が高まり、手術をあきらめていた人も手術ができるようになりました。

4)スキルス胃癌に対する新しい治療戦略

難治性の胃癌として恐れられている、スキルス胃癌に対しても私たちは果敢に挑戦しています。手術前におなかの中を制癌剤で治療する腹腔内化学療法と全身化学療法(内服薬の制癌剤を使用する)を行う、術前化学療法(NAC)を主体に治療しています。

5)腹膜播種を有するような進行胃癌に対する新しい治療法の開発

腹膜播種、腹水が有るような進行胃癌の患者様にも、私たちは決してあきらめず、治療を行います。全身化学療法のみならず、タキソテールを用いた腹腔内化学療法を併用しています。さらに、現在、タキソテールに遺伝子治療を加味して、より効果の高い治療法の開発に取り組んでいます。

3.大腸癌治療
1)低侵襲手術

腹腔鏡を用いた低侵襲手術を採用し、術後の疼痛、腸管癒着などを和らげ、緩和と早期退院に努めています。

2)機能温存手術

直腸癌では、内肛門括約筋切除術を用い、従来では人工肛門を付けざるを得なかったような症例に対しても肛門温存ができる手術治療を展開しています。また、肛門近くにある進行直腸癌に対し、術前に放射線化学療法を行い、できるだけ前立腺や肛門を温存する手術を行っています。

3)化学療法

手術不能進行癌や再発癌の患者様にはFOLFOX6の治療を行い、ご家族の期待に応えております。また、アバスチンやアービタックスなどの新規に認可された分子標的治療薬も積極的に使用し、転移、再発病巣の消失、縮小を目指し、できるなら手術的に切除する、決してあきらめない治療を目指しています。

4.肝臓癌治療
1)手術治療

肝切除が基本ではあるが、肝機能が悪い症例には、開腹下マイクロターゼ凝固療法も積極的に展開しています。マイクロ波やラジオ波で癌を凝固壊死させる治療法を取り入れ、リスクの高い患者様でも、体の負担が軽くてすむ治療を目指しています。

2)生体肝移植

劇症型肝炎、肝硬変症、非代償性肝硬変合併肝臓癌の患者様に対しては、十分な説明のもと生体肝移植も適応としております。

5.膵臓癌、胆嚢癌、胆道癌治療治療

膵臓癌は手術のみでは治療の困難な疾患です。我々は、最新の制癌剤治療を行い、膵臓癌患者の生存率を高めています。

1) 手術治療

予後も悪く、手術も合併症が多い疾患ですが、われわれの施設では、合併症を0にする手術に取り組んでいます。浸潤した膵臓癌でも、血管合併切除などを行い、できるだけ手術的に癌の切除に努め、術後もジェムザールとTS-1の化学療法を行い、予後の向上をはかっています。

2) 化学療法

不幸にして、手術不能であった患者様にもジェムザールとTS-1の化学療法を組み合わせた治療法を選択し、癌の進展を押さえ、良好な生存率を得ています。

6.乳癌治療

非常に細かい乳管内視鏡を用いて微小乳癌を診断しています。乳房温存手術が主体ですが、乳房摘出をせざるを得ない症例には乳房の再建手術も行っています。また、センチネルリンパ節を手術中に同定し、術中迅速病理診断を行っている。もし、センチネルリンパ節に転移が陰性の場合、リンパ節郭清を省略しています。これにより、不必要なリンパ節郭清を防ぐことが可能です。