1. 皮膚悪性腫瘍をはじめとする皮膚腫瘍・母斑・母斑症

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1. 皮膚悪性腫瘍をはじめとする皮膚腫瘍・母斑・母斑症

 いずれの癌も初期であれば完治に近い状態が得られますので、ごく早期に精確な診断をつけることに心がけております。しばしば良性の他の皮膚疾患に間違えられますので、皮膚癌についても患者さんには早めに皮膚科専門医に受診されることをお勧めしています。当科では、悪性腫瘍に対し数多くの手術を行っていますが、癌が非常に巨大かつ深部に進行していた場合、あるいは深部のリンパ節廓清が必要な場合は、耳鼻科、消化器外科、婦人科、形成外科の応援をいただいて手術を行うこともあります。

1)悪性黒色腫

 あらゆる癌の中で、最も生物学的に悪性度の高い癌で主に皮膚粘膜に生じます。治療の第一選択は手術ですが、進行度 によっては術後や、あるいは手術不能な進行期の黒色腫には化学療法を行います。

2)有棘細胞癌

 ごく早期の癌であるボーエン病や日光角化症を含めると、最もありふれた皮膚癌です。治療の第一選択は手術ですが、ごく早期の場合は、液体窒素療法や、イミキモドという樹状細胞表面に発現するtoll-like receptorに作用して免疫系を賦活する薬剤を用いて治療する方法も選択できます。術前・術後や、手術不能例に対し放射線療法や化学療法を行うこともあります。

3)基底細胞癌

 この皮膚癌も良く見られます。手術療法が基本です。浸潤・破壊性が強いため、しばしば術中迅速病理組織検査を行い、十分な切除範囲の確保に努めています。

4)乳房外パジェット病

 まれな皮膚の腺癌ですが、日本人には比較的多いと言われます。手術療法が基本です。原則として術前にmapping biopsyといって、切除範囲決定のための病理組織学的検査を行います。進行期には化学療法を行います。白癬(水虫、田虫)や湿疹・皮膚炎に酷似するためしばしば誤診され、手遅れになることがあるため、皮膚科専門医による診療が必須です。

5)皮膚附属器癌

 脂腺癌や汗腺癌が含まれますが、有棘細胞癌に準じた治療を行います。

6)隆起性皮膚線維肉腫

 まれな間葉系悪性腫瘍ですが、手術療法が主体です。浸潤性が著しいため、より広範にかつ深く切除する必要があります。その理由は、切除範囲が不十分で再発を繰り返すと、より悪性度が高まっていくからです。

7)母斑・母斑症

 一種の皮膚の奇形です。整容的に問題になる場合が多いため、切除を希望される患者さんも多く、その場合は積極的に手術を行っています。当科の吉田は神経線維腫症の厚労省研究班員の一人で、数多くの患者さんの受診希望があります。

当科での皮膚癌診療への取り組みについては、山陰中央新報2014年6月12日版に掲載されましたのでご覧になってください。