言語聴覚療法とはコミュニケーションや、食べること飲むことに障害を持つ人々の言語や聴覚や摂食の機能の獲得・回復・維持を支援し、最終的には「生活の質(QOL)」を高めるために行われるリハビリテーションや療育の一領域です。
社会的存在である人間にとって、コミュニケーション障害は社会生活をいとなむ上で最も困難な障害と言えます。しかしながら手足などの障害と異なって、その人の外見からだけでは理解しづらい障害でもあります。
現状の問題点を評価し、個々にあったコミュニケーション方法を目標に、訓練を計画し、実行していくことになります。
≪摂食・嚥下領域≫
口や喉の動きが悪くなった場合、食べ物がこぼれたり、飲み込みにくくなったりします。また、飲み込めなくてムセてしまう(気管の中に入る:誤嚥)。まず、なぜ飲み込みにくくなっているのかを評価して、口や喉の動きの練習をしていきます。なかなか普通の食事は取れない場合、どのような食事なら食べていけるかを相談していきます。退院後の食事についても、栄養管理部(担当管理栄養士)と相談して、指導していくことになります。
≪失語症領域≫
ことばが思い出せない、文字が書けない、言っていることが理解できない。年齢による低下とはいえない程度の言語機能の低下を失語症といい、主に左脳の損傷(脳卒中、頭部外傷など)によって起こります。ただ、一概に「言葉に問題が…」といっても、さまざまであり、得意なところもあれば、苦手なところもあります。まず、専門家は言語機能の得意な部分・苦手な部分を把握し、訓練に臨んでいきます。日常生活のコミュニケーションでは、家族や友人と会話していくことになり、『どうしたらうまくコミュニケーションがとれるのか?』も、指導・伝達していきます。
≪音声・発声発語領域≫
脳卒中の影響で、舌や唇が上手く使えず、発音が不明瞭になってしまう場合に、舌をどう動かせばいいのか、顔の筋肉の体操などをして、発音の訓練・指導を行います。声が上手く出せない・声がかすれてしまうなど、声に関する訓練・指導は、音声外来(耳鼻咽喉科・頭頸部外科)と連携して、行っています。
≪聴覚領域≫
当院では耳鼻咽喉科・頭頸部外科にて、重度難聴者に対して人工内耳手術を実施しています。ただ、人工内耳をいれたからといって、すぐに言葉が聞き取れるようになるわけではありません。人工内耳の調整を実施していき、その後日常生活で慣れていく必要があります。また、言葉を獲得する時期の子どもにとっては、難聴児・人工内耳装用児うまく言葉を使えず、コミュニケーションの発達に不安をかかえることがあります。言語訓練や聴き取り訓練を実施し、さまざまな発達の相談をしていきます。地域の療育機関と連携して、子どもたちの成長を支援していきます。
≪口唇口蓋裂領域(小児発声発語領域)≫
当院では歯科・口腔外科にて、口唇口蓋裂の手術を実施しています。口唇・口蓋裂の術後は、発音の苦手な子どもさんも多くいて、子どもの年齢・発育に合わせて、相談・訓練を行っていきます。また、歯科・口腔外科の医師、歯科技工士と連携をとって、必要時には歯科装置(補助庄)といわれる口腔内に入れる装置を用いていることがあります。
幼児からの発音指導が主ですが、小学生や中学生での課題(矯正や自己認識など)にも取り組んでいます。