Advanced Reproductive Medicine Center
鳥取大学医学部附属病院に新設された高度生殖医療センターは、
山陰地区における生殖医療の中核として、最先端の医療技術と温かなケアを提供します。
当院ではこのたび、複数診療科と多職種が連携して生殖医療を提供する「高度生殖医療センター」を新設します。センターの目的は、不妊症に悩む方への高度な治療を充実させるだけでなく、妊娠前の健康づくり(プレコンセプションケア)から妊娠・出産、さらに必要に応じた周産期管理までを切れ目なく支える体制を整えることにあります。鳥取県西部のみならず、鳥取県全域および島根県東部の住民の皆さまが、地域で安心して高度な生殖医療・周産期医療を受けられる環境づくりを目指します。
不妊症の原因は一つではなく、患者さんごとに必要な検査や治療の組み合わせが異なります。センターでは、女性診療科・泌尿器科を中心に、看護師、胚培養士、薬剤師、臨床心理士、医療ソーシャルワーカー(MSW)、管理栄養士、検査部門、医事課などが連携し、患者さんの状況に応じた治療計画を検討します。これにより、身体面だけでなく、心理面・生活面も含めた支援が可能になります。
女性側では、子宮内膜症や子宮筋腫などに対する腹腔鏡手術を含め、手術療法と不妊治療を同一施設内で継続的に行えるため、採卵や胚凍結のタイミングを含めた柔軟な治療設計が可能です。さらに、当院で実施可能な先進医療を導入します。男性側では、男性不妊症に対する専門外来が開設されます。顕微鏡下精巣内精子採取術(micro-TESE)を含む高度な外科的治療や、内分泌学的治療を適切に組み合わせることで、これまで県内では十分に提供が難しかった男性不妊治療の選択肢が広がります。
センターでは、妊娠成立だけを目標にするのではなく、プレコンセプションケアを重視します。生活習慣や栄養状態、既往歴、ワクチン接種歴、服薬内容などを確認し、将来の妊娠・出産に向けて心身の状態を整える支援を行います。妊娠後は、必要に応じて総合周産期母子医療センターとしての機能と連動し、ハイリスク妊娠の早期抽出と適切な管理につなげます。妊娠前からの評価と介入により、より安全な妊娠・出産を支える体制を構築します。
化学療法や放射線療法は、将来の妊孕性に影響を及ぼすことがあります。そのため、がん治療開始前に妊孕性温存(精子、卵子、受精卵、卵巣組織などの保存)について適切に説明し、必要時に迅速に対応できる体制が重要です。センター新設を契機に、院内関連診療科および県内医療機関との連携をさらに進め、がん患者さんが治療選択の機会を失わないよう、がん・生殖医療の地域連携を推進します。
排卵障害、卵巣機能の低下、卵管機能の障害、子宮筋腫や子宮内膜症など、女性の不妊症の原因は多岐にわたります。原因は一つとは限らず、複数の要因が重なっている場合もありますし、また、検査を行っても明らかな原因が分からないこともあります。
以下のような症状がある方は、一度ご相談ください。
女性不妊症の原因として、排卵障害(卵巣性・中枢性)、卵管機能障害、卵巣機能の低下(加齢による影響を含む)、女性生殖器(子宮・卵巣など)の形態異常、子宮筋腫や子宮内膜症などの疾患、遺伝的要因などが挙げられます。
高度生殖医療センターでは、不妊症の原因を調べ、患者さんそれぞれに最適な治療法をご提案します。
卵管の疎通性を調べるための検査です。月経開始後7日目~10日目頃までに実施します。卵管の状態だけでなく、子宮筋腫や子宮の形態異常が見つかることもあります。
脳から分泌されるホルモンの働きにより、卵巣内に卵胞が発育し排卵が起こります。卵胞発育に関わるホルモン値を測定し、排卵障害の原因を調べます。月経3日目~5日目に行います。排卵障害の原因となる多嚢胞卵巣症候群の診断にも有用です。
抗ミュラー管ホルモン(AMH)は、卵巣の状態(卵巣予備用)を調べるために有用な検査です。卵巣にある発育前の卵胞(前胞状卵胞)から分泌されるホルモンで、卵巣予備能を把握するために利用されます。一般的に25歳頃にピークを迎え、その後は加齢とともに徐々に低下します。AMH値は、不妊治療の計画(時期・治療内容など)を検討する際の重要な指標です。
また、多嚢胞卵巣症候群ではAMH値が高くなる傾向にあるので、他のホルモン値や超音波所見などと合わせ、診断の参考とします。
排卵前の時期に定期的に経腟超音波を行い、卵胞発育をモニタリングします。女性生殖器の形態異常や、子宮筋腫・子宮内膜症などの疾患の評価にも有用です。短時間で行えるため、不妊治療において重要な検査です。
超音波検査で女性生殖器の形態異常や疾患が疑われた場合、より正確に診断するためにMRIやCTを撮影することがあります。
子宮鏡と呼ばれる細いファイバーを用いて子宮内を観察する検査です。子宮内膜ポリープや粘膜下筋腫など、不妊症の原因となり得る病変の検出に有用です。
生殖補助医療を行っても良好な胚が得られない場合などに、カップルの染色体検査(遺伝カウンセリング)を検討します。必要時は当院の遺伝子診療科へご紹介します。
卵胞発育をモニタリングしながら、性交渉を行う適切な時期をご案内します。排卵障害などで卵胞がうまく発育しない場合は、排卵誘発剤を併用します。
タイミング法でうまく妊娠しない場合、性交障害がある場合、乏精子症や精子無力症などの男性因子がある場合に、精製・選別した精子を子宮内に注入する治療法です。卵胞発育をモニタリングし、排卵日前後に実施します。
3~4回実施しても妊娠に至らない場合は、生殖補助医療へのステップアップを検討します。
体外に取り出した卵子を精子と受精させ、得られた受精卵を体外で培養し、子宮内に戻す治療法を総称して生殖補助医療と呼びます。
卵巣から卵子を採取(採卵)し、体外で精子と受精させ、胚を育てる治療です。卵管因子、原因不明不妊、タイミング法・人工授精で妊娠に至らない場合などに選択されます。
採取した卵子に対し、1個の精子を細い針で卵子中へ直接注入し、受精を助ける治療です。精子数や運動率が低いなどの男性因子、受精障害が疑われる場合、過去の体外受精で受精率が低かった場合などに検討します。
培養して育った胚を、細いカテーテルを用いて子宮内に戻す治療です。子宮内膜の状態やホルモン環境を確認し、着床しやすい時期に合わせて実施します。体外受精・顕微授精で得られた胚を妊娠につなげる、治療の最終段階です。
高プロラクチン血症、甲状腺機能異常、黄体機能不全、糖代謝異常などは、不妊の原因となることが知られています。血液検査の結果を参考に、病状に応じた治療を行います。
子宮筋腫、子宮内膜症、子宮内膜ポリープなどの良性疾患は、不妊の原因となることがあります。超音波検査、MRI/CT検査、子宮鏡検査などで診断し、手術療法の必要性を検討します。病変の大きさや位置にもよりますが、患者さんの負担が少ない低侵襲な術式(腹腔鏡手術または子宮鏡手術)を通常選択します。
帝王切開瘢痕症は、帝王切開後に子宮下部に「くぼみ」が残ることにより、月経後の褐色帯下や下腹部痛が続いたり、不妊に関与したりする状態です。くぼみに貯まった経血や分泌物が、着床環境に悪影響を及ぼす可能性が指摘されています。高度生殖医療センターでは、症状と画像所見から病状を丁寧に評価し、保存的治療から手術療法(子宮鏡・腹腔鏡手術)まで、妊娠希望と安全性を両立する治療をご提案します。
不妊症の原因の約半数は、男性側にもあるといわれています。
高度生殖医療センターでは、男性不妊症の検査・治療を専門的に行います。
以下のような方は、一度ご相談ください。
男性不妊症の原因は、ホルモン異常、精索静脈瘤、遺伝的要因、精子を作る機能の低下などさまざまです。
高度生殖医療センターでは原因を調べ、患者さんそれぞれに合った治療方法をご提案します。
精子の数、動き、形などを調べる検査です。男性不妊の基本となる検査で、状態評価のため複数回行うこともあります。
精子を作る働きに関係するホルモン(テストステロン、FSH、LHなど)を調べます。ホルモン異常が原因で精子が少なくなっている場合があります。
陰嚢内の精巣や血管の状態を調べ、精索静脈瘤の有無、精巣の大きさ、精巣の状態を確認します。
生まれつきの染色体異常がないかを調べる検査です。無精子症や高度乏精子症の原因として染色体異常が見つかることがあります。
男性の精子を作る遺伝子(Y染色体)の一部が欠けていないかを調べる検査です。無精子症や高度乏精子症の原因を調べるために行います。
原因に応じて、以下のような治療を行います。
ホルモンバランスの異常が原因で精子が少ない場合に行います。精巣の働きを改善し、精子を作る力を高めることを目的とします。定期的に血液検査を行いながら治療を継続します。
陰嚢の血管がこぶのように拡張する精索静脈瘤は、精子数や運動率低下の原因になることがあります。手術で拡張した静脈を処理することで、精液所見の改善が期待できます。当院では顕微鏡を使用した精索静脈瘤手術を行っています。
無精子症と診断された場合でも、精巣内にわずかに精子が残っていることがあります。顕微鏡で精巣内を詳しく観察し精子を回収する手術を、精巣内精子採取術(micro-TESE) といいます。回収した精子は凍結保存し、顕微授精に使用することができます。
抗がん剤や放射線などによるがん治療は、妊孕性(妊娠する力)を低下させる可能性があります。
妊孕性温存療法とは、がん治療開始前の早期に卵子や精子を採取して凍結保存し、将来の妊娠の可能性を残すことを目的とした治療です。がん治療の内容によって妊孕性への影響はさまざまです。
また、がん治療以外でも、膠原病治療でアルキル化剤を投与する場合や、再生不良性貧血などの非がん性血液疾患で造血幹細胞移植を実施する場合なども、妊孕性温存療法の適応となります。
当センターでは、がん治療担当医と連携し、迅速かつ最適な妊孕性温存療法を計画します。
がん治療開始前に、未受精卵子または胚(受精卵)を凍結保存します。一般的な生殖補助医療と同様、卵巣刺激開始から採卵までに2週間程度を要します。
抗がん剤治療や放射線治療の前に精子を凍結保存し、将来子どもを持つ可能性を残します。射精で精子が採取できない場合には、精巣から直接精子を採取する手術(onco-TESE)を行うことも可能です。
がん治療終了後、治療担当医から妊娠の許可が得られた際に、凍結保存した未受精卵子、胚(受精卵)、精子を用いて生殖補助医療を行います。
このたび、とりだい病院において「高度生殖医療センター」を開設する運びとなりました。
鳥取県が掲げる“子育て王国”の理念のもと、将来を担う子どもたちが健やかに生まれ育つ地域社会の実現に寄与すべく、生殖医療体制の一層の充実を目指してまいります。
令和4年には、体外受精・顕微授精などの生殖補助医療(Assisted Reproductive Technology; ART)が公的医療保険の適用対象となり、現在わが国では約8人に1人がARTにより妊娠されています。こうした社会的背景をふまえ、本センターではARTを中心とした高度生殖医療に加え、男性不妊診療、さらには必要に応じた低侵襲手術までを一体的に提供できる体制を整備いたしました。
女性診療科、泌尿器科、麻酔科など複数診療科が緊密に連携し、患者さん一人ひとりの状況に応じた最適な治療を実践する“チーム医療”を実践してまいります。これまで女性に負担が偏りがちであった治療についても、男性が積極的に治療に取り組みやすい環境を整えることで一組でも多くのカップルに新しい命が授かるよう、スタッフ一同全力で支援いたします。
また、地域の医療機関・行政機関とも連携をさらに深め、妊娠前の健康管理(プレコンセプションケア)から治療、妊娠・出産、そして子育てへと続く切れ目のない支援の実現を目指します。生殖医療に関わるすべての方々に寄り添い、安心して治療に臨んでいただける環境づくりに努めてまいります。今後とも、皆さまの温かいご理解とご支援を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。
専門医・資格等
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