センターからの挨拶

肝疾患診療連携拠点病院認定に鳥取大学医学部附属病院が認定される

 わが国の死因の第1位は悪性新生物(がん)ですが、癌による死亡者数で見ると、肝癌は男性では3番目、女性では4番目に多く、また、肝硬変なども含めた肝疾患による年間死亡者数は、約4万人に及びます。
 肝癌は、大部分が慢性肝炎や肝硬変などの慢性肝疾患にかかっている患者さんに起こってきます。慢性肝疾患の原因は、約70%がC型肝炎ウイルス、15%がB型肝炎ウイルスの持続感染で、アルコールや脂肪肝炎などがそれに続きます。現在日本には150万~200万人のC型肝炎患者が存在していると推定されており、ウイルス性肝炎、特にC型肝炎はわが国の「国民病」とされ、肝癌への進行を防ぐためにも、その対策が重要とされてきました。
 肝炎ウイルスに対する治療は、近年長足の進歩を遂げております。
 C型慢性肝炎では、今まで治療が難しかった方でも、ペグインターフェロン・リバビリン併用療法や経口抗ウイルス療法により、高率にウイルスの完全排除ができるようになりました。また、平成20年4月から、肝炎治療に対し、国が医療費の一部を助成する「肝炎治療特別促進事業」がはじまりました。(鳥取県でもたくさんの方が受給を受け、治療されております。)
 B型慢性肝疾患ではインターフェロンと核酸アナログ剤を使い分けることで、長期にわたって肝炎を沈静化させることが可能になってきました。肝炎がしっかり落ち着けば、身体の自然治癒力によって、肝硬変近くまで進行している患者さんが、数年かけて正常に近い状態まで回復するのも稀ではありません。
 しかし、B型およびC型肝炎ウイルスに感染していても、肝硬変や肝癌に進行するまでほとんど自覚症状がないことから、自分で気付くことは大変難しく、あるいは検診などでウイルス感染を知らされても、「別に身体の調子は悪くないから」「インターフェロンは副作用がきつくて、仕事が出来なくなると噂で聞いたから」などの理由から、治療をうけずにおられる方も多いのです。ウイルス性慢性肝疾患の多くが治癒またはコントロール可能な時代を迎えたのにもかかわらず、自分が感染者であることをご存じない、または肝炎についての知識が少ないために治療をうけられないでいる患者さんが多数残されているのがわが国の実態といえるでしょう。
 この状況に対抗すべく、平成19年度から、厚生労働省は各都道府県に 「肝疾患連携拠点病院」の認定をはじめました。鳥取県では鳥取大学医学部附属病院が認定され、平成22年1月、消化器内科(旧第2内科)内に事務局と肝疾患相談センターが併設されました。  以下の方法で患者さん、事業者、および一般の医療機関に対して、肝疾患の診療に関わるさまざまな情報を提供してゆく予定です。

  1. 検診などで肝炎ウイルスに感染していることが判明された方の相談
  2. 「かかりつけ医」と「肝疾患専門医」との連携の補佐
  3. 地域の医療従事者(医師、看護師、薬剤師等)に対し、肝炎に関する研修会の開催

 これら我々の活動が、鳥取県の肝炎患者の治療および肝癌発症予防に寄与することを祈願しております。

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