2016年1月21日、鳥取大学医学部附属病院は米子市の米子全日空ホテルにて、シンポジウム「医療機器産業進出への新たな挑戦 〜小さな地域鳥取から世界へ〜」を開催しました。 このシンポジウムは当院が国産医療機器創出促進基盤整備等事業で実施している「医療機器開発人材育成共学講座」の平成27年度事業の締めくくりとして企画したものです。 日本各地で医療機器開発に果敢に挑戦し、新しい取り組みを構築し、成果を出しておられる方々をお招きして、その取り組みやノウハウを紹介していただきました。
2016年1月21日、鳥取大学医学部附属病院は米子市の米子全日空ホテルにて、シンポジウム「医療機器産業進出への新たな挑戦 〜小さな地域鳥取から世界へ〜」を開催しました。 このシンポジウムは当院が国産医療機器創出促進基盤整備等事業で実施している「医療機器開発人材育成共学講座」の平成27年度事業の締めくくりとして企画したものです。 日本各地で医療機器開発に果敢に挑戦し、新しい取り組みを構築し、成果を出しておられる方々をお招きして、その取り組みやノウハウを紹介していただきました。
鳥取大学医学部附属病院
病院長 清水英治
医療機器開発の成功事例を学ぼうと多くの参加者が会場を埋めた
当院は、厚生労働省が医療機器開発に携わる人材を育成すべく公募した「国産医療機器創出促進基盤整備等事業」に採択されています。本事業は、医療機器を開発する人材を医療現場が積極的に受け入れることによって、医療機器開発の資質を持つ人材を育成しつつ、国内外の医療ニーズを満たす医療機器開発の推進を図ることを目的としたものです。
本事業の一環として当院の次世代高度医療推進センターでは、医療現場の職員と県内企業が共に学ぶ場「医療機器開発人材育成共学講座」を開設。本年度は講演会をはじめ、医師、看護師のニーズを企業に紹介する取り組みや医療機器産業の先進地である浜松地区への視察を参加企業とともに行いました。今回のシンポジウムは、これらの取り組みの締めくくりとして「挑戦」をキーワードに実施するものです。
人口最少県である鳥取県から中小ものづくり企業を核とした医療機器産業集積地を構成する挑戦的な取り組みや病院を中心とした水素社会の実現のための革新的な取り組みを発信していくことが地域の活性化、地方創生に必ずつながると信じています。
厚生労働省医政局経済課
医療機器政策室
室長補佐 徳本史郎氏
「国産医療機器創出促進基盤整備等事業」は、全国各地の11拠点、北は東北大学から南は大分大学で行われており、オールジャパンで取り組んでいる事業です。鳥取大学医学部附属病院および県内企業の皆様が開発する医療機器をぜひ世に出していただきたいと思います。国内の医療機器市場は、この5年で20%強伸びています。医療機器産業に携わっておられる皆様、またこれまで関わってこなかった業種の方々にも医療機器産業への参入をご検討いただき、日本の高度なものづくり技術を活かしてより良い医療の提供や国際展開にご協力いただければと思っています。本日の講演を聞かせていただくとともに、皆様とお話させていただき、次の政策につながるアイデア、ヒントをいただきたいと考えております。
鳥取県商工労働部産業振興課
主事 蓜島隆昭 氏
鳥取県では、経済再生成長戦略のひとつに医療イノベーションを掲げています。本県にはかつては大手電機メーカーの拠点があったことから県内には多数の電機関連企業が育っており、それらの関連企業の有望な挑戦分野のひとつに医療機器産業が挙げられます。
医療機器の世界市場は毎年8%の成長率を維持し、今後も拡大すると予測されています。さらに医療機器にはカテーテルなどの治療系と内視鏡などの診断系の2種類があり、前者は輸入超過、後者は輸出超過のため、治療系に注力して参入していくべきと考えられます。また医療機器産業に従事する企業の従業員規模は、49名以下が60%以上と、企業規模に関係なく取り組むことが可能です。ただし、医療ニーズの開拓や薬事関係のノウハウについては参入のハードルが高いため、ここで産学官の連携が重要になってくると考えています。
そのために県では現在、2つの事業を推進しています。ひとつは鳥取県産業振興機構との補助事業「医工連携推進事業」で、産学官連携コーディネーターの配置やニーズ調査の支援、県内企業の医療機器開発などを対象とした補助金の交付により、医療機器への参入を希望する企業のスタートアップを支援するというもの。もうひとつは本年度から始めた、鳥取大学医学部附属病院の受託事業「とっとり発医療機器開発支援事業」です。これは鳥取大学医学部附属病院が実施している「医療機器開発人材育成共学講座」を通して企業の人材育成を行う中で生まれた医療機器開発プロジェクトの支援を行うというもので、「国産医療機器創出促進基盤整備等事業」では対象外となっている機器開発費をサポートすることを特徴としており、他地域には類を見ない挑戦的な事業となっています。この事業では、鳥取大学医学部附属病院と県内企業が共同で取り組む医療機器開発案件を外部専門家に審査していただき、有望な案件はその後の展開を支援します。本年度は40テーマ以上の中から3件を採択いたしました。
このように鳥取県・鳥取県産業振興機構・鳥取大学医学部附属病院の三者で医工連携を推進し、医療ニーズや技術シーズに基づく市場探索から臨床研究、薬事申請など、上市に至るまでのあらゆるフェーズを支援していきます。
鳥取県は平成25年度から医工連携を本格始動させて3年目であり、現段階での医療機器産業への参入企業数は10社です。これまでご説明してきた施策によって、平成31年度には40社にまで伸ばすことを目標としています。
鳥取大学医学部附属病院
次世代高度医療推進センター
副センター長 上原一剛
平成26年に薬事法が医療品医療機器法へと「医療機器」を含む名称に改正されたことをはじめ、先進的な医療機器の上市のニュースも相次ぐなど、現在は医療機器への注目度が高まっており医療機器開発には追い風が吹いていると言えます。
その医療機器には開発から市場に出るまでに多くのステップがあり、当院ではそれを見据えた医療機器開発に取り組んでいます。私が所属する次世代高度医療推進センターは平成24年度に再生医療部門・ゲノム医療部門・医療機器部門の3分野でスタートしました。その後、産業化臨床研究部門と臨床研究支援部門の2部門が加わり、現在は5部門体制を敷いています。センターには医師だけでなく、看護師や薬剤師、企業出身者など多彩な人材が所属していることも特徴です。これにより企業から持ち込まれた開発案件の目利きをはじめ、知的財産のマネジメントや臨床研究の支援などが可能になります。このように、医薬品や医療機器の開発を基礎研究から実用化までシームレスに支援できる体制の構築を進めています。
こうした体制の構築により、当センターでは医療機器開発に関するさまざまな取り組みを行っています。AMED(厚生労働省)の「国産医療機器創出促進基盤整備等事業」で開設した「医療機器開発人材育成共学講座」では、手術支援ロボット「ダヴィンチ」の操作体験や、医療ニーズと企業シーズの発掘のための意見交換など、さまざまな企画を実施しました。この講座への参加を契機に医療機器製造業を取得した企業もありますし、今まで連携がなかった企業間でビジネスが始まったという話もあり、明らかにプラスの効果が出ています。また、文部科学省の「未来医療研究人材養成拠点形成事業」に採択されている「鳥大発 独自教育プログラム『発明楽』の実践」では、メディカル・イノベーションを推進できる人材の育成を目的に大学院の中に新たなコースを設置しました。経済産業省の「課題解決型医療機器等開発事業」では、大腸検査の苦痛を解決するための触覚付きの内視鏡開発に取り組んでいます。
さらに企業との共同研究にも積極的に取り組んでおり、後にご講演いただく本田技研工業株式会社とも、次世代自動車を非常用電源として活用し医療機器に給電するという共同実験を行いました。
そして学内では、農学部を加えた医工農連携を推進しています。膵臓組織などの生検を効率的に実施するためのデバイス開発に取り組み、企業とも連携して昨年2月にデバイスの製品化を実現しました。今後も革新的な機器の製品化に尽力するとともに、地域経済の発展や新産業創出に貢献していきたいと考えております。
福島県商工労働部産業創出課
医療関連産業集積推進室
室長 大越正弘氏
福島県では10年ほど前から医療機器産業の振興に力を入れ、医療機器生産額は全国第3位の規模となっています。東日本大震災以降は特にこの医療機器開発の分野を伸ばそうと「研究開発推進」「参入支援・地域活性化」「医工連携・人材育成」「情報発信・海外展開」の4つの戦略を立て、それを実行する場として拠点整備に取り組んでまいりました。
「研究開発推進」では、医療関連産業集積プロジェクト補助金などによって、医療用ロボットスーツをはじめ、ディスポーザブルタイプの内視鏡や心臓バイパス手術のトレーニングシステムなどの医療機器の製品化や企業技術の高度化を図る事業を支援してきました。これまで支援してきた40数件のうち4割にあたる18件が市場化レベルにあり、さらに量産のための工場を県に誘致することに取り組んでおります。
また、「参入支援・地域活性化」および「医工連携・人材育成」としては、産学官からなる福島県医療福祉機器産業協議会を発足。協議会には278の企業と団体が加盟しており、県内企業のシーズと医療現場のニーズをマッチングさせるためのフリーディスカッションの場づくりなどの活動を行っています。ビジネスマッチングを支援するために、ものづくり企業と医療機器製造業者と医療機器のそれぞれの分野に精通したコーディネーターを雇用し、企業を回ってヒアリングを実施。企業はコンサルティングを無料で受けられますし、要望があれば、薬事の専門家を無料で派遣しています。
さらに、「情報発信・海外展開」としては、国内外のビジネスショーへの出展を支援しているほか、福島県独自でもイベントを開催し、ビジネスマッチングを図っています。中でもドイツで開催されている世界最大規模の医療機器技術・部品の展示会「MEDICA・COMPAMED」に5年連続で福島県ブースを出展し、県内企業にそこで商談をしていただいた結果、4日間の会期中に数億円の取引に至った企業もあります。
加えて海外に進出したい県内企業への支援事業と、福島県に進出したい外国企業の招聘事業を展開してきました。特に招聘事業は1社2,800万円まで融資可能と、全国の類似施策の中でも群を抜く金額を設定。すでに3社のエントリーをいただいています。
最後の「拠点整備」としては、「ふくしま医療機器開発センター」を現在整備しており、今年11月に完成します。このセンターは、生物学的試験と電気化学的試験が同時に行える日本初の施設です。さらに創薬の拠点として、バイオマーカーやがん治療薬などの開発支援を行う「医療-産業トランスレーショナルセンター」を建設しております。こちらも今年の7月に完成予定です。
株式会社ナノ・グレインズ
医療機器本部
部長 鈴木啓太氏
私は医療機器メーカーで研究開発プロジェクトリーダーを務めてきた経験を活かし、2014年に「SESSA」と名付けた中小企業医療機器開発ネットワークを創設しました。この「SESSA」には、ものづくりメーカー5社が加盟しており、現在も全国から参加企業を募っています。
「SESSA」では、医療機器そのものや医療機器用の加工技術の共同開発に加え、展示会への出展など各社の技術を発信する活動などを実施しています。中でも、力を入れているのは各社との懇親会です。私が医療機器を設計して図面を渡すのですが、ものづくりメーカーの職人は構造が難しくてつくれないと初めは話してきます。しかしその職人と向き合って、この寸法がなぜ必要なのか、この技術ができるとどんな患者様が助かるのかをしっかりと理解いただくとその翌週にはその部品ができてくる。だからこそ懇親会が重要だと捉えています。
こうした技術開発に加え、その技術を購入いただく医療機器メーカーに対して、具体的な活用事例や医療現場における価値が伝わる提案方法を加盟企業とディスカッションしています。各加盟企業の営業の場では自社製品だけでなく、他の加盟企業の技術と組み合わせて売り込むことで受注につながることもあるというのが「SESSA」の特徴です。
ただし、これらの医療機器開発は海外でも盛んに行われており、労働コストの高い日本では、すでに汎用化された製品の生産においては競争優位性がありません。そのため医療機器メーカーに対して、医学的効果が高く、高い価格で売れる医療機器の開発を逆提案しています。こうして良い物をつくれば世界中の医療機器メーカーが顧客となって、製品を販売してくれるのです。
さらに医工連携のビジネスモデルにおいては、医療現場とものづくり企業を結ぶ医療機器エンジニアの存在が重要です。医師は医療の専門家ですが、医療機器ビジネスの専門家ではありません。そのため、医師の医学的ニーズを技術的ニーズに変換してものづくり企業に伝え、医療機器の技術的な効果を医学的な効果に変換して医師に伝える医療機器エンジニアが必要です。ただし、どちらも理解できるエンジニアは多くありません。だからこそ「SESSA」というグループを組むことで少ないエンジニアが多くのものづくり企業をフォローする体制を取っています。
「SESSA」の概念は、「日本の中小ものづくり企業の超精密加工技術」「日本発の材料技術」「医療機器エンジニアの経験とスキル」の掛け合わせです。これにより、加盟企業の持つ加工技術や材料技術を医療機器へと転用しています。
最後になりますが、医療機器ビジネスに参入するにあたっては、医療機器開発のどの部分を行うのか、どのように利益につなげるのか、そして日本で、鳥取で医療機器開発をすることにどんなメリットが打ち出せるのかを考えなければならないということをお伝えします。
本田技研工業株式会社
四輪事業本部 事業企画統括部
スマートコミュニティ企画室
主任技師 岩田和之氏
本田技研工業(以下Honda)では、鳥取大学医学部附属病院と次世代自動車の新しい価値や機能について共同で研究を進めています。本日は、燃料電池自動車(以下FCV)や電気自動車(以下EV)といった次世代自動車になぜ自動車メーカーが取り組んでいるかということからお話しさせていただきます。
自動車業界では地球温暖化につながるCO2排出への規制が厳しさを増しており、CO2を排出しない、つまりエンジンを持たない自動車の開発が求められています。しかし、自動車の排出するCO2をゼロにするだけでは根本的な解決にはなりません。EVの動力となる電気やFCVの燃料となる水素の製造過程で多くのCO2が排出されているためです。そこでHondaは太陽光をはじめとする再生可能エネルギーで水素を製造する「スマート水素ステーション」の技術開発も進めてきました。
一方、日本では東日本大震災などの経験を踏まえて国土強靭化に取り組んでいます。この強靭化では、有事だけではなく平時も使えるものを身近に揃えるべきという考え方が基本になっています。電気を発電したり蓄えることができるFCVやEVは、平時は移動手段、有事には非常用電源として利用できるため、強靭化に合致した製品と言えます。
こうした社会情勢を踏まえ、Hondaでは水素社会の実現に「つくる・つかう・つながる」というコンセプトで取り組んでいます。水素をつかうFCVに加え、再生可能エネルギーで水素をつくる「スマート水素ステーション」、FCVやEVなどにつなげて電気を取り出す外部給電器を開発しています。
そして、これらの製品の組み合わせにより、有事の際に次世代自動車を発電機として利用するという実証実験を2015年8月に鳥取大学医学部附属病院と共同で行いました。災害が起こり停電した避難所などを想定し、EVから外部給電器を介して医療機器を実使用時と同様に稼働するというものです。実験では簡易レントゲンや人工呼吸器、人工心臓、ドクターカーといったさまざまな医療機器が問題なく稼働しました。非常にスムーズに進んだ実験でしたが、その背景にはひとつのエピソードがあります。実は実験の前に、EVから外部給電器を介して取り出した電気の波形と普段病院で医療機器を作動させている電気の波形とをオシロスコープで比較しました。その結果、EVから取り出した電気の方がきれいな波形、つまり安定した品質の高い電気であるということが証明できたのです。それを見た設備管理の方からも「これなら医療機器を動かせない理由がないね」と太鼓判をいただき、我々は自信を持って実験に取り組むことができました。
さらに東日本大震災の時に、東北の病院では酸素吸入を必要とする方々のために酸素濃縮装置を50台用意したものの停電により稼働できなかったと聞いていました。Hondaの外部給電器ではEVやFCVから9kVA、一般家庭3軒分の電力を一度に供給できます。実証実験では複数台の酸素濃縮装置に電力供給を行い、計算上48台に電力供給できることを実証しました。
また後日、鳥取大学医学部附属病院からリクエストをいただき、鳥取県で行われたDMAT(災害医療派遣チーム)の訓練でFCVと外部給電器によって搬送拠点のPCや衛星電話などに電力を供給しました。
共同実証実験の様子。EVから外部給電器を介して、内視鏡(左)や人工呼吸器(右)に電力を供給
将来的には、水素による発電技術を核にした大学病院のレジリエンスモデルを構築できるのではないかと考えています。災害時に道路や電力供給が途切れたとしても、水と「スマート水素ステーション」、そしてFCVがあれば電力を得ることができ、各避難所にFCVで電力を届けに行くことができるでしょう。FCVからEVに電力供給し、そのEVが他所へ出向いて電力供給することも可能です。コミュニティの中で地産地消のエネルギーをつくることができれば、電力のバケツリレーによって、ライフラインを確保できるのではないかというのが我々の提案です。さらに水から電気分解を行い、水素をつくるときの副産物である酸素も病院で活用できるのではないかと考えています。
鳥取大学医学部附属病院
次世代高度医療推進センター
センター長 植木賢
医療現場には多くの課題があります。今は医療従事者が訓練することでその課題に対応していますが、進化あるいは新たに開発される医療機器によって改善できる課題も多いと考えています。当院は「国産医療機器創出促進基盤整備等事業」に採択いただき、さまざまなつながりが広がりました。そして昨年だけで92社と面談を行い、現在は北海道、大阪、九州の企業、宮崎大学の農学部と連携して眼内調節レンズの開発を進めているほか、さまざまな医療機器等の開発など40件ほどの課題に取り組んでいます。
こうした取り組みを行う当院には2つの特長があります。ひとつは病院を開放して現場直結型の機器開発を行うこと。もうひとつは診療科の垣根が低く、全診療科が協力して集まれること。本田技研工業株式会社との実証実験では診療科横断的なワーキンググループをつくり、さまざまな医療機器を持ち込んで実証試験を行いました。私たちにできることは限られていますが、病院という場所をどんどん開放し、現場に近い、ニーズにあったものを皆様に開発していただきたいと思っています。私たちも全力で取り組んでいきます。今後ともよろしくお願いいたします。
ホテル内でのシンポジウムが終了した後、来場者は屋外の特別展示の会場へと足を向けました。この会場で行ったのは、特別講演で本田技研工業株式会社(以下Honda)の岩田氏に紹介いただいた当院との共同実験で行った外部給電のデモンストレーションです。岩田氏をはじめとするHondaスタッフにご協力いただき、「フィットEV」と外部給電器「Power Exporter 9000」により、医療機器などに電力を供給する様子を実演していただきました。
電力供給先は酸素濃縮装置3台、内視鏡(モニターを含む)、卓上吸引機、除細動器、照明、ヒーターです。外部給電器から多くの配線が伸び、ずらりと並んだ機器に一斉に電力を供給しました。
来場者は先ほどの講演で紹介されたEVからの電力供給の仕組みを目の当たりにして、多くの医療機器などの電子機器が実際に動いている様子に驚き感心するとともに、真剣なまなざしで見つめ、共同実験の状況や成果、外部給電の仕組みについてHondaや当院のスタッフに質問を投げかけていました。また発電機と比較して騒音や振動、排気ガスのニオイといった五感に障るものが何もないことにも驚かれた方が多くいらっしゃいました。こうして盛況のうちにシンポジウムを終了いたしました。
Hondaの電気自動車「フィットEV」と外部給電器「Power Exporter 9000」
テーブルの上に並んだ医療機器に1台のEVから電力を供給
EVから外部給電器を介して供給された電力で内視鏡を操作
通常使用時と何ら変わりなく稼働する3台の酸素濃縮装置
医療機器と同時にヒーター2台と投光機にも電力を供給
多くの来場者がデモンストレーションを見学
EVにつないだ外部給電器のコンセントに接続するだけで電力を供給
来場者から次々と投げかけられる質問に答えるHondaの岩田氏
●特別展示見学者の声
FCVは非常時に電力も取り出せることが分かり、参考になりました。福島県では東日本大震災のときに電力が寸断され、酸素吸入や人工透析が使えずに亡くなった方もいらっしゃいました。こういうものがあれば、もっと人命を救えたのではないかと思います。地元に戻ったら、関係者と今回の話を共有したいと思います。
ー 福島県商工労働部産業創出課医療関連産業集積推進室室長 大越正弘氏
デモンストレーション用に持ち込んだ酸素濃縮装置が、EVからの電力で無事動作するか心配していましたが、在宅や医療の現場と同じように動くことが確認できました。また、驚いたのは発電機と違って、音が全くしないことです。水素社会という言葉も、HondaのFCVのことも知ってはいましたが、今回の講演を聞いて一層理解が深まりました。
ー フクダライフテック中国株式会社米子営業所長 大谷和広氏
金融機関として、どういうお手伝いが出来るか、地方創生に貢献できるビジネスチャンスはないだろうかという観点からシンポジウムに参加しました。外部給電器はもっと大きなものを想像していたのですが、意外にコンパクトですね。災害対策用に当社の店舗網でも活用できるかもしれないと思いました。
ー 株式会社鳥取銀行常務取締役 穐山誠氏
鳥取大学医学部附属病院が開設する「医療機器開発人材育成共学講座」にも参加していますが、今回のシンポジウムでも貴重なお話を聞くことができました。デモンストレーションでは安定した電圧電流で電力を供給していることが素晴らしいと思いました。あとは、本当の意味でのゼロ・エミッションが実現できる世界に早くなってほしいと願っています。
ー 鳥取県産業振興機構西部支部医工連携コーディネーター 眞野博光氏