乳房再建

鳥取大学は、乳房再建(乳房の形を整える手術)に対して、全国で初めて厚生労働省「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針」の承認を得ました。この指針に従って、自分の脂肪細胞を移植する方法(自己皮下脂肪組織由来細胞移植)を用いた乳房再建が行われました。

自己皮下脂肪組織由来細胞移植とは

乳がん術後の乳房再建には、自分の体の組織をとって移植する自家組織移植やシリコンなどの人工物を使う方法があります。

自家組織移植は、手術が大がかりで、体の別のところに新たな傷ができます。人工物の場合、手術の後にひきつったり(拘縮)、シリコンが露出したり、感染したりするなどの問題点があります。患者さんご自身からとった脂肪をそのまま注入する方法もありますが、従来の脂肪注入では、脂肪が定着する確率(生着率)が50%前後と低く、満足な結果が得られていません。特に、乳房温存術(乳房をできるだけ残す手術)による部分的にくぼんだ(陥凹)変形の場合、良い再建方法がないのが実情です。

そこで、注目されているのが、自己皮下脂肪組織由来細胞移植という方法です。この方法は脂肪を直接注入するのではなく、脂肪から細胞を取り出して、その細胞だけを移植する方法です。脂肪組織内には脂肪細胞や血管の壁を作る細胞があり、この細胞を移植することで、血管を備えた脂肪組織が作られるといわれています。また、この方法は脂肪の生着率が高い(90%)といわれます。この方法は、保険が適応できる治療ではなく、現段階では臨床研究として実施することが求められます。

乳房再建術の全体像

今回の臨床研究の目的

乳房温存術後の陥凹変形に対し、自己皮下脂肪組織由来細胞移植による乳房再建術を行います。そして、主に以下の3点について評価します。

  1. 脂肪組織由来細胞を移植することによる別の病気(合併症)や、たまたま生じるような不都合な症状(偶発症)が出ないか。
  2. 乳房の形が良くなるか。
  3. 乳房のことを気にせず楽しく生活できるかどうか。

この臨床研究の対象となる方
  1. 乳がんに対する乳房温存術を受けてから1年以上経過し、再発や転移のない方。
  2. 20歳以上の女性。妊娠中の女性を除きます。
  3. 本人自らが希望していること。
  4. 他の悪性腫瘍、他の重い病気がない方
  5. 治療後5年間は鳥取大学医学部附属病院に通院し、経過観察ができる方

事前のアンケート、診察、検査などを行い、最終の対象者は、鳥取大学医学部附属病院内「自己皮下脂肪組織由来細胞移植による乳癌手術後の乳房再建法の検討に関する小委員会」で決定しました。

治療の方法

自己皮下脂肪組織由来細胞移植術の方法

  1. 脂肪吸引を行います。吸引部位は腹部、大腿部(太もも)、殿部(お尻)のいずれかからです。
    1㎝程度の皮膚切開を数カ所行い、そこから専用の管(吸引カニューレ)を用いて、脂肪を吸引します。
    吸引後、切開した部分を縫合します。
  2. 専用の機器で、吸引した脂肪から、脂肪組織由来細胞を抽出します。
  3. 濃縮した脂肪組織由来細胞と必要量の脂肪細胞を混合し、混合液を作ります。
    脂肪組織由来細胞が高い割合で含まれた脂肪混合液ができます。
  4. 混合液を乳房の陥凹部分に注入します。

よくある質問Q&A

Q.脂肪組織由来細胞とはなんですか。

A.脂肪組織由来細胞は、皮下脂肪組織に存在する間葉系細胞(組織を支える性質の細胞のこと)の一種です。この細胞は、脂肪細胞や血管の壁を作る細胞にもなることができ、血管を備えた脂肪組織を作ります。あなたご自身の細胞であるため、移植しても拒絶反応は起こりません。

本臨床研究について

本臨床研究へのエントリー受付はいったん締め切らせていただきます。
たくさんのエントリーありがとうございました。
今回の臨床研究の結果を検討した上で、今後、この治療を推進していくよう努めます。