発達障害

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発達障害

 発達障害とは、生まれついて脳の機能のアンバラスがあるもので、得意・不得意がはっきりしている特性を持っています。以前はごく稀な疾患と思われていましたが、最近ではかなり頻度の高い疾患として認識されています。典型的な症状を持つ場合には、3歳児健診や小学校入学時に気づかれることがありますが、知的な問題がなかったり、強いこだわりや問題行動が無い場合は学校や家庭で気づかれないこともあり、成人になって初めて「自分は発達障害ではないか」と考えて精神科・心療内科を受診する方が近年増えつつあります。また発達障害の患者さんは得意・不得意のアンバランスさがあるために、思春期になり自分と他人との違いに思い悩んだりして、うつ症状や不安障害、強迫性障害などの精神症状を合併することも知られています。

 当院は、平成20年度より「子どもの心の診療拠点病院」に指定され、精神科、脳神経小児科、小児科、鳥取大学医学部大学院臨床心理学科が連携して、発達障害の診察、治療を連携して行なっています。乳幼児期や学童期における発達障害の早期発見・介入は主に脳神経小児科・小児科が行い、青年期・成人期の診断・治療は主に精神科が行なっています。また精神症状の合併がある場合には学童期早期から精神科も共同診療という形で治療にあたっています。臨床心理学科は、ペアレントトレーニングなどを通して発達障害の治療にあたっています。

 発達障害は、広汎性発達障害(自閉症、アスペルガー症候群など)や注意欠如・多動性障害(ADHD)、学習障害(LD)を含みます。当科では広汎性発達障害とADHDについて診断、治療を行い、本人・家族への特性理解を促す疾病教育や、環境調整のためのアドバイスを学校や職場に行なっています。

 広汎性発達障害とADHDについて、説明します。

 広汎性発達障害(PDD)は、次の3つの特性がみられます。

 ① コミュニケーションの障害 ・・・会話が一方的で自分の興味のある話題ばかり話す、オウム返しがある

 ② 社会性の障害 ・・・集団行動が苦手、視線が合わない、場の空気が読めない、適切な距離感がつかめない

 ③ 想像力の障害 ・・・興味・関心の偏り、こだわり、予定外の事態で混乱する

 これらの特性が共通して見られます。言葉や知的な遅れがみられる場合とみられない場合がありますが、最近受診と診断が増えているのは知的な問題がない場合です。知的な問題が無い場合でも、詳しく知能検査などを行うと、得意・不得意のアンバランスがみられることがあります。早期に発見して集中的に応用行動分析(ABA)やTEACCHによる介入を行うことが理想ですが、現実的には全員に行うことは難しいところです。構造化した場面や先の見通しを立てやすくすることなどの工夫で安定した療育を受けやすくなることが多いので、そうしたアドバイスを行なっています。また療育場面だけでなく、家庭でも親が共同治療者のように療育を行うことも有効であり、ペアレントトレーニングも重要です。広汎性発達障害の方は、思春期頃になると自分と他人の違いに戸惑い、うつ症状や強迫症状、不安障害、恐怖症などを呈することがあり、結果として不登校や引きこもりになることがあります。また高校や大学を卒業し社会にでた際に、社会の暗黙のルールや対人関係で不適応を起こしやすく、うつ病や一過性の精神病状態を呈することもあります。本人の特性の理解を促すとともに、特性にあった対応を周囲が配慮したり、特性にあった仕事を選んだり(ジョブマッチング)することで、生活の質(QOL)の低下を防ぐことができると考えられます。

 注意欠如・多動性障害(ADHD)は、次の3つの特性があります。

 ① 不注意 ・・・同年代の子どもに比べて注意力が続かない、忘れ物やケアレスミスが多い

 ② 多動性 ・・・授業中でもじっと座っていることが苦手

 ③ 衝動性 ・・・何かを思いつくと、結果を考えずに即座に行動する

 これらの行動的特徴が、年齢不相応に、家庭や学校などの2ヶ所以上でみられることが特徴です。多動性・衝動性は男児で目立ち、幼稚園や小学校低学年で気づかれることが多く、受診につながりやすい傾向がありますが、不注意さはなかなか気がつかれないため、受診が遅れることがあります。こうした特徴は学童期に目立ち、徐々に治まることもありますが、成人期まで症状が持続することがあります。成人期では、不注意さは仕事のうっかりミスが増えたりして、自分を責めてしまい不安障害やうつ症状を呈することがあります。多動性は成人では軽快していきますが、衝動性はアルコール依存症や薬物依存症、多重債務。交通違反などと関連することがあります。治療法としては、薬物療法が有効です。メチルフェニデートの徐放剤、ノルアドレナリン再取り込み阻害剤などが処方可能です。またトークンエコノミーといった行動療法、ペアレントトレーニング、音や光が刺激となって集中を妨げないような環境調整を行います。こうした治療的介入により、ADHDの行動特徴が問題行動にならないような対応を行い、自尊心の低下や反社会的行動につながらないように予防することが重要になります。