気分障害(うつ病、躁うつ病)

 気分障害には、大きく分けて「うつ病」と「双極性障害(躁うつ病)」があります。最近の2つの話題を中心に、当疾患について紹介します。

 1つ目の話題は、うつ病と躁うつ病の鑑別診断についてです。

 この2つの疾患は症状が類似することがあるため、しばしば鑑別診断に困難な場合があります。躁うつ病とは文字通り、「躁」と「うつ」が出現しますが、「うつ」で発症することが多いため、当初はうつ病として治療されてしまいます。そしてうつ病として治療された後(場合によっては10年以上経過して)、初めて明確な「躁」が出現し、その時点で診断名が変わるということが起きてきます。その場合、理論的にはそもそもの診断であるうつ病ではなかったことになりますが、現在の診断基準では「躁」が出現しない限りは躁うつ病と診断されないため、このような事態となってしまいます。両疾患は気分障害という同じカテゴリーで病名も似ていますが、治療方法(主に薬物療法)が異なるため、両疾患の鑑別は大変重要となります。当院で行われている「光トポグラフィー検査を用いたうつ症状の鑑別診断補助」が両疾患の鑑別の一助となります。気分障害の治療は薬物療法が主体となりますが、うつ病では抗うつ薬が、躁うつ病では気分安定薬が用いられるという違いがあります。その他の治療としては、認知行動療法や修正型電気けいれん療法が行われることもあります。

 2つ目の話題としては、そもそもの「うつ」の診断です。

 世間一般で使用される「うつ」と医学用語の「うつ」は異なり、世間一般の「うつ」であるにも関わらず、医学用語の「うつ」として治療されてしまうということや、逆に治療が必要な「うつ」が見過ごされることがあります。医学用語の「うつ」は、抑うつ気分もしくはうつ状態・うつ病と呼ばれるものです。抑うつ気分とは、2週間以上にわたり、ほとんど毎日、ほとんど1日中悲しいとか虚しいなど気分の低下を認めるもので、うつ状態・うつ病の症状の1つです。うつ状態・うつ病と診断するには、そのほか睡眠、食欲、意欲の障害などを含めて総合的に判断します。以前はうつ病に対する偏見も強く、うつ病の未受診が問題となっていましたが、近年はうつ病の過剰診断の危険性についても指摘されるに至っています。