大動脈瘤に挿入されたステントグラフトのイメージ図
腹部大動脈瘤とは、動脈硬化などにより腹部の大動脈がこぶ状に膨らんで、自覚症状はないものの破裂すると突然死にいたる重篤な疾患です。腹部大動脈の正常径は2cm前後ですが、4cmを越してくると破裂の危険性があるとされています。治療法としては、開腹して動脈瘤を人工血管に取り替える手術が一般的ですが、侵襲が比較的大きい手術であります。
近年、より低侵襲な治療法として注目されているのがステントグラフト内挿術です。具体的には、4cm程度両側の太ももの付け根を切開し、太ももの動脈からカテーテルを挿入し、スプリングを縫い合わせた人工血管(ステントグラフト)を動脈瘤の内側に留置することで動脈瘤にふたをする治療法です。この方法だと、腹部を切開する必要がないため、治療翌日朝より食事、歩行が可能で、従来の開腹手術(術後数日の絶食が必要です)に比べ入院期間が半分以下に短縮し、術後合併症も少なく、また患者様の体に負担も少ない最先端の低侵襲治療です。また局所麻酔、硬膜外麻酔でも施行可能で、特に肺合併症を有する患者様には積極的に局所麻酔、硬膜外麻酔で施行しております。ただ、腎動脈からの距離、角度、動脈径などの解剖学的条件に一定の制限があり、すべての症例に施行できるわけではありません。 2006年7月本邦でも既製品のステントグラフトが保険認可され国内でも使用可能となりました。しかしながらステントグラフト治療を施行するには、施設、および施行する医師は関連学会の定めた厳格な基準をクリアしなければなりません。鳥取大学医学部附属病院心臓血管外科ではすべての基準をクリアし、2007年8月より山陰地区ではじめて既製品のステントグラフトを使用した治療を開始しました。現在2~3例/月のペースで症例を積み重ねており、山陰地区では最多の症例数です。動脈瘤の患者様がおられましたら、またステントグラフトについて質問などありましたら当院心臓血管外科(外来:0859-38-6572)にご相談いただければ幸いです。どうぞよろしくお願い申し上げます。
術前の大動脈の3D-CT画像 付け根の部分がこぶ状に ふくらんでいるのがわかる | 術後の大動脈瘤の3D-CT画像 |