リハビリテーションだより 3号

2003年10月8日
発行人 豊島良太
発行責任者 萩野 浩
鳥取大学附属病院
リハビリテーション部


「リハ便り第3号」では腰痛について取り上げました。職員の皆様は「大学法人化」や「医療情報システム、フェーズ3」に向けて、診療や準備作業に追われ多忙な日々をお過ごしと思います。
立ちっぱなしで仕事をする人、座りっぱなしで仕事をする人、いずれにも腰痛は起こりやすくなります。そのような方の一助になれば幸いです。


腰痛について

腰痛は中高齢者における有病率が最も高い疾患の一つです。腰痛といっても内臓疾患、大動脈瘤などの血管病変、神経の腫瘍・炎症、また心因性にも発生します(表)。

しかし、一般に最も頻度の高いのは脊椎やその関連機構が原因となる脊椎性腰背痛です。これらの疾患の鑑別は臨床症状、理学所見、レントゲン所見、MR画像によって行われます。

腰痛に殿部や下肢の痛みをともなう場合、これには腰部神経根を圧迫して生じる根性痛と、関連痛として疼痛が起こる場合があります。根性痛を生じる代表が腰椎椎間板ヘルニアで、そのほか脊椎すべり症、腰部脊柱管狭窄症などでもみられます。一方関連痛は椎間関節性腰痛が典型例で、椎間関節の痛みを原因部位である腰椎から離れた殿部や下肢に感じるものです。

内臓性腰痛は原因疾患に重篤なものが含まれるため、脊椎性腰痛との区別が重要になります。両者の違いのポイントは、安静時に痛いかどうかをみることです。内臓性腰痛が安静時にも疼痛を生じるのに対して、脊椎性腰痛は動作時に最も痛みが強くなります。

表 腰痛の原因


  • 脊椎に原因があって起こるもの
    • 椎間板ヘルニア
    • 椎間関節性腰痛
    • 脊椎すべり症
    • 腰部脊柱管狭窄症
    • 変形性脊椎症
    • 筋筋膜性腰痛
  • 脊椎以外に原因があって起こるもの
    • 腎・尿管結石
    • 大動脈瘤
    • 胃腸疾患、胆嚢疾患(胆石、胆嚢炎など)
    • 膵疾患(急性膵炎、膵臓癌)
    • 骨盤内臓器の疾患(婦人科疾患)
    • 心因性

ですから横になって休んでいる時にも同じように痛みが強い場合は、脊椎以外に原因を考える必要があり、立ったり座ったりした際や歩行時に痛みが強い場合は脊椎性腰痛が考えられます。

慢性腰痛に対する治療は、消炎鎮痛剤の服用、治療体操などの運動療法、物理療法が中心となります。根性痛を生じている場合は神経ブロック療法なども必要となります。また中腰の姿勢をさけたり、物を床から持ち上げる際に必ず膝を曲げ、体に近づけて持ち上げたりするなどの、日常生活上の注意もたいへん重要です。

そこで軽度の腰痛の改善や、予防を目的とした治療体操をご紹介致しましょう。文献には各種腰痛体操が考案報告されていますが、比較的よく用いられている体操を次ページに記します。

リハビリテーション部だより03-01 腰痛体操

リハビリテーション部だより03-02

リハビリテーション部だより03-03

A-基本姿勢(1)のまま、片側の脚を上方に挙げて膝の後側をしっかりと伸ばす。(左右交互に繰り返す)
B-基本姿勢(2)から、片側の脚を曲げて両手で胸の方に抱え込む。この時反対側の脚が曲がらないように注意する。(左右交互に繰り返す)
C-基本姿勢(1)から、両側の膝をそろえたまま両手で胸の方に抱え込み、背と腰を丸めるようにする。
D-基本姿勢(1)から両手をヘソの上に置く。鼻から大きく息を吸込み、口からゆっくりと吐きながら上体を起こして保持し、息を吐き終る時に基本姿勢へ戻る。
E-基本姿勢(1)のまま鼻から十分に息を吸込み、口からゆっくりと吐きながら腰の骨をベッドに押し付ける。息を吐き終えたらリラックスする。
F-基本姿勢(1)のまま、両側の膝をそろえた状態で脚を片側に倒し腰部以下を捻る。(左右交互に繰り返す)
G-基本姿勢(3)(腹部の下に枕を入れる)のまま片側の脚を伸ばした状態で後方に挙げる。この時腰部を反らさないように気をつける。(左右交互に繰り返す)

リハビリテーション部だより03-04

リハビリテーション部だより03-05

リハビリテーション部だより03-06

リハビリテーション部だより03-07

リハビリテーション部だより03-08

リハビリテーション部だより03-09

リハビリテーション部だより03-10

リハビリテーション部だより03-11

 

以上AからGを5~10回ずつ繰り返します。
1日1回で十分でしょう。毎日おふろ上がりにでもゆったりとした気分で行って下さい。